山梨県富士河口湖町から鳴沢村にまたがって広がる青木ヶ原樹海。面積はおよそ30平方キロメートルと広大で、その全貌を正確に把握するのは困難だ。そんな当地を20年以上にわたって訪れ続けているルポライターの村田らむ氏が一冊の書籍を上梓した。
書籍のタイトルは『樹海考』(晶文社)。ここではその一部を抜粋し、同氏がこれまでに樹海で発見した多種多様な落し物を写真とともに紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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落とし物
樹海内部には、さまざまなモノが落ちている。
僕が長年樹海を散策中に見つけたモノを中心に紹介してみよう。
僕が初めて樹海に行った時は、今よりも青木ヶ原樹海に対する保護意識が甘かった。まだ富士山にもゴミがたくさん捨てられていた時代で、いわんや樹海をや、である。
樹海の道路沿いの部分には、よく粗大ゴミが不法投棄されていた。たとえば大量のドラム缶や、大量の車のタイヤだ。おそらくトラックで持ち込んで、捨てて逃げていったのだろう。
2013年、富士山が富士山信仰の対象と芸術の源泉としてUNESCOの世界遺産リストに登録された。結果的に清掃活動が盛んになり、悪質な業者による粗大ゴミの投棄は見られなくなった。
また、昔は樹海に一歩足を踏み入れると、ナイロン製のロープが縦横無尽に張りめぐらされていたが、今はずいぶん減った。これは、昔に比べて情報ツールがいちじるしく進化したというのも原因の一つだろう。つまり、ロープで目印をつけるようなアナログ手段をとらなくても樹海探索ができるようになったのだ。
また、一般の散歩客が来る樹海の遊歩道には、昔は金属製の網でできたゴミ箱が置いてあった。倒されて中身が散らばった状態で何年も放置された場所がある。空き缶は平成生まれの人は知らないプルタブ式(開けると蓋が本体から外れる)で、懐かしい気持ちになった。
業者以外にも一般の人が捨てたであろうゴミもたくさんあった。たとえば大量のアダルトビデオ。それも熟女モノばかりだった。プレス作品の主流がDVDに切り替わり、いらなくなったVHSの作品を一気に捨てたのだろう。
財布やカバンがいくつも捨ててあるのを発見することもよくあった。これは今でもたまに見つける。どれも使用感があり、中からは現金が抜かれている。置き引きなどで盗んだ財布、カバンの中身を抜いて樹海に捨てたのか? と推測するが、そんな軽犯罪の証拠品の隠滅のためにわざわざ樹海まで来るか? という疑問は残る。