二刀流で通算の記録を残すことは難しい
二刀流成功の基準値としてよく挙げられるのは、ベーブ・ルースが1918年に記録してから100年にわたって誰も達成していない二桁勝利二桁ホームラン(ルースの18年の記録は13勝11本塁打)である。
しかし、打者としては戦後初の三冠王を獲得し、捕手としても数多の好投手の球を受けてきた野村にかかると、そのハードルはもう一段高くなる。
「大谷もプロ入りして6年になる(取材時)のだから、もうある程度数字を残さなきゃいけない。二刀流でこれまでに成功した人がいないのだから。ぜひその第一号になってほしいわな。成功の基準は3割20勝。そこまでいかないと成功とは言えないだろう。単に二刀流に挑戦するというだけなら、さほど難しいことではないけれど、それで結果を残すのが大変なんだよ。
二桁勝利二桁ホームランというけれど、ベーブ・ルースは二刀流としてではなく、その後の大打者としての実績で野球史に名前を残したわけだから、比較の対象としてはどうなのかな(ちなみに大谷よりも先にアメリカにおいて和製ベーブ・ルースと称されたのは、中学時代の清宮幸太郎の打棒に対してであった)。
二刀流でやっていく以上は通算での記録を残すことは難しいだろうね。6年目で通算ホームラン数が50本を超えたところでは、俺の記録(通算657本塁打)すら抜けないよ。名球会の2000安打、200勝なんて何年現役を続けなきゃいけないんだよ(日本5年間の大谷はトータル296安打42勝。同程度のペースでいくと仮定したときには2000安打、200勝に到達するまで投手で20年、打者では30年近くを要することになる)。人気商売である以上はマスコミの話題にもならなきゃいけないのだけれど、二刀流としての成功をうたうのであれば、やっぱり年間で3割20勝は期待したいわな」
二刀流で成功してもらいたいという気持ちは当然あるものの、その一方で大谷の活躍をいくらか寂しく思う気持ちもあるという。野村の現役時代には雲の上の存在だったメジャーリーグのレベルの低下だ。