不滅の記録をつくればいい
「だから大谷についても二刀流ということへの驚きはあるけど、活躍すること自体は意外でもない。所属するエンゼルスのファンが『オータニー! オータニー!』と騒ぐ姿を見ると隔世の感を禁じ得ないけれど、もういまはそういう時代になったということなんだろうね。今後も日本人選手はどんどんメジャーへ行くことになるんだろうけど、本当にえらい時代になったもんだな」
1996年のオールスター戦でイチローが投手として登板したときには「オールスターは夢の舞台であって、遊びの場じゃない」と怒りをあらわにした野村。やはりイチローが2015年にメジャーのマウンドに上がったときにも不快感を示したものだが、それと大谷の二刀流ではもちろん話が違う。真剣に取り組みながら実際に通用しているのだから、文句のつけようもないという。
「今後は大谷の影響で二刀流に挑戦したいという若者も出てくるだろうな。それはもうやればいい。チャレンジは若さの特権なんだから。
大谷に彼女はいるのか? あまりそういう噂は聞かないけれど、まあモテるんだろうなあ。他人の結婚についてあれこれ言える立場ではないけれど、でも、結婚するならアメリカ人よりも日本人を薦めるよ。やっぱりあちらとでは風習が違うからね。まだ23歳か(取材時)。いまはメジャー最低保証の年俸しかもらっていないらしいけど、これからどんどん稼ぐね。稼いでくればいい。10年後に大谷はどうなっているんだろうね。その頃にはもう俺はいないから(笑)。あと5年も生きたらいいほうだよ。だから俺みたいなもう終わった人間の言うことなんてどうだっていい。常識外の二刀流? 結構なことじゃないか。不滅の記録をつくればいいんだよ」
《追記》野村さんにお話を伺ったのは2018年5月16日。この頃には車椅子を利用するなど体調はすぐれないようでしたが、それでも大谷の試合はテレビでチェックしていたとのこと。渡米前にテレビ番組で大谷と対面したことはあまり記憶に残っていなかったご様子でした。二刀流については「結果が出ているから」と認めつつも、しばしば言葉を詰まらせ言い淀むなど、やはりどこか納得のいかない気持ちがあったようにも感じられました。2021年の大谷の活躍は、野村さんの想定内だったのでしょうか。
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