松井秀喜が記録を有していた、MLBにおける日本人シーズン最多本塁打記録を更新するなど、大谷翔平の勢いが止まらない。彼の凄まじい活躍をプロ野球関係者はどのように見ているのだろう。

 ここでは『証言 大谷翔平』(宝島社新書)の一部を抜粋。2012年から2017年までMLBで活躍し、現在も独立リーグ「ルートインBCリーグ」の栃木ゴールデンブレーブスで現役生活を続ける川﨑宗則が語った大谷翔平への思いを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

※本文中敬称略

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イチローのシーズン最多安打記録も「4年目」

 川﨑はメジャー4年目を迎えた今年(2021年)が大谷のターニングポイントだと指摘する。イチローがメジャーのシーズン最多安打記録(262安打)を打ち立てたのは2004年、太平洋を渡って4年目のことだった。

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「4年目って、ちょうどいいんですよ。環境にも英語にも慣れ、ルーティーンができて、メンタル面で楽になります。結果うんぬんではなく、今年1年間ずっとグラウンドに立てるか、という大事な時期だと思います。ジョーもいますし、彼ならきっとできるはずです」

 メジャーで二刀流をやり続ける。練習では投手、そして打者として繊細かつ膨大な準備が必要となる。それでも大谷は、4月26日(現地時間)のレンジャーズ戦で「2番・投手」として先発出場して今季初勝利を挙げた。本塁打数リーグトップの選手が先発したのは、ベーブ・ルース以来100年ぶりの偉業だった。

「これはすごいですよ、大変なことですよ。しかも、相手はメジャーリーグの投手、メジャーリーグの打者。そのなかで大谷選手はどんどんレベルアップしている。真似したくてもできないし、スペシャルな男にしかできないこと。だから、僕ら日本人が彼をリアルタイムで見られることは、本当にラッキーなんです」

 打者としては大谷とは違うタイプだからこそ、日米の打者の違いを実感している。

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「メジャーはやっぱり本塁打なんです。もちろん日本にもいい打者は多いんですけど、どちらかというとつないでくる。感覚としては『先の塁、先の塁』なんです。アメリカの打者は先の塁ではなく、1点を取りにくる打撃をする。スイングするだけで『ブンッ』と音が出る。その音は投手にとって、すごくプレッシャーになるんですよ。1番から9番まで本塁打が打てて、ひと振りで1点を取る野球を目指すのがメジャーリーグなんです」