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「つい自分の右サイドを壁側にしちゃうんです」 元女性警察官の“漫画家になっても抜けない”習慣の理由とは?

漫画『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』作者インタビュー

2021/07/07
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「仮眠時間に未決事件をかたさないと仕事が追いつかない」

――そんな厳しい学校を卒業して、ようやく警察官に。日々の業務はどんな感じだったんでしょうか?

 最初、新任はもれなく交番勤務になるんですよ。交番は三交代制でやっていて、そこから数年経つとそれぞれ捜査だったり、交通だったりに分かれていく感じです。

 交番時代は、朝7時頃に警察署に行って、まず若手は掃除をします。そこから交番で8時半ごろに勤務交代の挨拶をして、次の日の8時半に交代要員が来るまで仕事するという感じですかね。24時間ぶっ通しです。一応寝る時間はあるんですけど、私の新任時代は「仮眠の時間に未決事件をかたさないと、とてもじゃないけど仕事が追いつかない!」という感じでした。突発的な事案対応で仮眠が取れないことも多かったですね。

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※写真はイメージです ©istock

――たしかに『ハコヅメ』の作中でも「寝ていない」警察官たちが繰り返し出てきます。あれは本当に…?

 もちろん波もあるんですけど、概ねそんな感じです。作中に北条という捜査一係の刑事がいるんですけど、北条のモデルの1人にした捜査係長は3年間の単身赴任が終わった時に、若い刑事さんが引っ越しの手伝いにいったら、布団袋から布団が一度も出ていなかったと言っていました。だから3年間、ちゃんとは寝なかったんでしょうね…。

すごい刑事さんは全身から殺気が…!

――3年間…? それ、ヤバい職場ですよね?

 そうですよ! その係長は夏場でも寒くてコート着ていましたもん。たぶん体温調節がちょっとおかしくなっていたんだと思いますけど。でも、そういうすごい刑事さんって、殺気みたいなものが全身から出ているんですよ。『バガボンド』や『ワンピース』の強いキャラクターって、体からフワ~ッとオーラが出るじゃないですか。それが出ている刑事さんって本当にいるんです。「すごい人がいるんだな」と間近で見ていて思いました。そういう意味ではいい経験でしたね。喋りかけるのは怖かったですけど。

©泰三子/講談社

――その時と比べると漫画家に転身した今は…?

 楽ですね(笑)。いや、楽って言ったら語弊がありますけど。ストレスはないですよね、そんなに。たまにネットでたたかれるのを我慢すればいいだけですし。まぁネットでたたかれても別に直接、襲撃してくるわけじゃないじゃないですか。自分の身は安全ですし。