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自分の右サイドを壁側にしたい理由は…

――笑い話みたいですけど、交番勤務時代は実際にそういうことも気を付けないといけないですもんね。

 そうなんです。「実際に襲撃されるかもしれない」というストレスがなくなったので、それはすごくありがたいことで。やっぱり「スミマセン」と言ってパッと交番に入ってきた方が何者なのかわからないという状況はすごく怖いんですよ。当時は「背後に人は立たせない」というのはすごく注意されていましたね。特に女性警察官ということもあって、拳銃を奪取されたくないので、自分の右サイドは絶対に壁側にしたいという癖は何となく今でも抜けないですね。

――今でもですか! なんか武士みたいですね。

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 そんなカッコよくないです(笑)。怖さが抜けないという感じですね。

――泰さんは似顔絵捜査もやられていたと聞きました。

 そうですね。でも、実際に連載を始めてみると、漫画を描くのとは全然、違いますね。勉強にはなりましたけど。ただ、似顔絵捜査をさせられていた頃は、テレビに出ている俳優さんとかをよく見ていて。それこそ今回のドラマで主演を務めてくれる戸田恵梨香さんって、役によってすごく顔がかわるんです。「この役の時なら釣り目っていう人が多いだろうけど、この役の時はたれ目っていう人の方が多いだろうな。こういう犯人、描くことになりませんように!」みたいなことはうっすら考えたことがあったので、今回戸田さんの名前が出てきたときには「おお…」となりましたね。

ドラマ版は戸田恵梨香さんと永野芽郁さんのW主演 公式ホームページより

似顔絵捜査は絵の上手さより「特徴を掴めるか」が大事

 人の目が釣っているとか、垂れているというのは、物理的なジャッジは難しいんです。しかも事件の犯人となると、一瞬視界に入っただけということも多い。だからみなさん結構、印象で語っておられるんですよね。なので、当時はいろんな人の顔を「この顔は、この目は、皆さんならどういう風に表現するんだろう?」ということばっかり考えていました。

――作中でも、「綺麗すぎる似顔絵はあまりよくない」という話がありました。

 絵そのものは下手くそでも、人の顔の特徴を掴んでいると“誰を描いたか”がわかる絵になるんですよね。だから、そういう力はついたのかもしれません。

ドラマ版『ハコヅメ』公式Twitterより

――そんなバリバリに働いていた警察を辞めて、突如漫画家になろうと思ったのはなぜなんですか。

 広報担当の部署にいた時に、地元の高校生への講話を担当したことがあったんです。その時に「警察官になりたい人はいますか?」と聞いたら、1人だけ手を挙げかけた男の子がいて。ガタイも良くて、爽やかな感じで、すごくいい子だったんですけど「警察官になりたいと思っていたけど、親に『アンタみたいな人がなれるわけがないじゃない』と言われてあきらめた」と言うんです。