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2021/07/18

source : 文藝春秋

genre : 社会

秋篠宮家が「女官」をなくした意味

 秋篠宮一家の世話をする「皇嗣職」の職制に注目してみましょう。皇太子一家を支えていた東宮職は、皇太子さまの世話をする男性の東宮侍従長や東宮侍従が控えていました。雅子さまを担当するのは、女性の東宮女官長や東宮女官でした。男性と女性で仕事や役割がほぼ分担されていました。しかし、皇嗣職は、宮務官長と宮務官が置かれ、従来の侍従、女官という名称をなくしています。

仲睦まじく自撮りをする眞子さまと佳子さま(宮内庁提供)

 女性の宮務官が秋篠宮の世話をすることもありますし、男性の宮務官が紀子さまの仕事を受け持つこともあります。秋篠宮さまは、男性だからこの仕事、女性だからこの仕事と、最初から決めつけることはしないで、職員の適性や能力に応じて仕事を割り振ろうとしています。生物学的な男女の性の違いではなく、社会的、文化的に形成された男女の違いをジェンダーと呼びます。以前から、私は、秋篠宮さまがこのような社会的、文化的に形成された男女の違いについて違和感を覚え、改善に向けて努力をしたり、かなり意識的に発言しているように感じています。

 たとえば、2006年11月の会見で秋篠宮は、女性皇族の役割について「私たち(男性皇族)と同じで社会の要請を受けてそれが良いものであればその務めを果たしていく。そういうことだと思うんですね。これにつきましては、私は女性皇族、男性皇族という違いは全くないと思っております」と、発言しました。私は、会見でのこうした発言の背景にも秋篠宮さまの鋭い時代感覚を感じ取っています。

秋篠宮殿下と紀子さま(宮内庁提供)

 19年秋の記者会見で秋篠宮は、新しい皇室像について「時代によって要請も変わってきます。ですからその時代時代に即した在り方というのは、常に考えていかなければいけないと思っています」と、述べています。女性の能力を積極的に評価しようとする秋篠宮さまの姿勢は、「ジェンダー平等を実現しよう」とする今の時代の流れに沿ったものだと思います。「時代時代に即した在り方というのは、常に考えていかなければいけない」という宮様が考える皇室のあり方と、重なるのではなかろうか、と私は考えております。

「大嘗祭を国費で賄うことが適当か」緻密なご意見

 宮様の「大嘗祭」について発言は、皆様の記憶に新しいことと思います。18年11月、誕生日会見でした。この時、宮様は天皇の代替わりに伴う皇室行事「大嘗祭」について、「国費で賄うことが適当かどうか」と発言し、大きく報道されました。

 秋篠宮さまはこう述べました。

「宗教色が強いものについて、それを国費で賄うことが適当かどうか、(中略)宗教行事と憲法との関係はどうなのかというときに、それは、私はやはり内廷会計で行うべきだと思っています」

2021年5月17日、地域おこし協力隊他と接見される秋篠宮皇嗣同妃両殿下(宮内庁提供)

 憲法20条は、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と明記しています。「政教分離の原則」と呼ばれるものです。これまでも、神道方式で行われ、宗教色が強い大嘗祭への国費の支出は憲法に違反するのではないか、と専門家たちからは指摘されてきました。秋篠宮さまの発言はまさにこの点を突いていました。その解決策として宮様は「内廷会計」、つまり天皇家の私的生活費を利用して、大嘗祭を行うべきだと提案したのでした。ちなみに、毎年皇居で行われる新嘗祭などの皇室祭祀は内廷会計で賄われています。

 結局、前例を踏襲して大嘗祭は国費で行われましたが、秋篠宮らしい、筋の通った意見表明だったと私は思いました。そう思われた国民も多かったと思います。現在の象徴天皇制を支える最大の基盤である日本国憲法について秋篠宮さまは日ごろから強い関心を持っています。また、宮様は緻密で、論理立てて考える性格でもあることも、この大嘗祭発言で理解が深まったのではないでしょうか。