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「前田さんが猪木さんのところで何かを訴えていたんです」 旅館の主が振り返る昭和プロレス史の伝説“旅館破壊事件”が起きるまで

「前田さんが猪木さんのところで何かを訴えていたんです」 旅館の主が振り返る昭和プロレス史の伝説“旅館破壊事件”が起きるまで

新日本プロレス「熊本・旅館破壊事件」の真実#2

2021/07/11

猪木を取り囲む、酔った若手選手たち

 異変を感じて大広間にかけつけた梅村さん夫妻が見たものは、猪木を取り囲む、酔った若手選手たちの姿だった。

「多分、前田さんだったと思うんですけど、その他にも若い選手がね、猪木さんのところに行って、ずっと何かを訴えているんです。プロレスをもっとこうしなくちゃいけないんだとか、仕事に関することですよね。その時点でもうみんなお酒が入ってかなり酔っているようでしたけど、猪木さんはずっと座ったまま、黙って『ウンウン』ってひたすら話を聞くという感じでね。そのうちですよ。どこかで殴り合いが始まって、収拾がつかなくなったんです」(里美さん)

理想と現実のはざまに揺れていた当時の前田。猪木は前田の話をひたすら聞いていたという

 どうして乱闘が始まったのか、梅村さん夫妻に明確な記憶はない。リング上では敵対関係にある新日本とUWFがなぜ、この日に飲み会をすることになったのか。その背景について新日本側から説明があるわけでもなく、プロレスに関して特別詳しいわけでもなかった夫妻にとっては、「酒に酔ったプロレスラーたちがケンカを始めた」という外形的な状況以上のことは何も分からなかった。

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かけられた言葉は「これは、我々のレクリエーションです」

「唖然ですよ。なんだか、プロレスより凄いなって。そのうち食べたものをそこらじゅうに吐いちゃって。ああ、掃除が大変だからやめて…と思いましたけど、あんな大きな人たちがケンカしたら、恐ろしくて何も言えんよね。ただ見守るだけ」(里美さん)

「私の両親(先代の主人・女将)はその場にいなかった気がしますね。呼びにもいきませんでした。とてもじゃないけど、見せられん光景ですよ。父はプロレスファンでね。有名な猪木さんや藤波さんも泊まるちゅうことで楽しみにしとったんです。それがこれですから」(健児さん)

 健児さんは修羅場となった現場で、ある中堅選手にかけられた言葉をいまでも覚えている。

「誰だったかな。若手選手ではなかったと思うんやけどね。『これは、我々のレクリエーションです』って言うわけですよ。たまったもんじゃないですけどね(笑)」(#3へ続く)

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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