元旅館経営者の言葉を読み解くことで、ようやく明らかになってきた昭和プロレス史に残る大事件「熊本旅館破壊事件」の真実。“参加者”たちの言葉とは裏腹に、現実とは大きな乖離があったことがわかってきた。最後は、事件の経緯と当事者たちの証言を、元経営者である梅村健児さん(70)と里美さん(64)夫妻にファクトチェックする形で進行してみたい。(全3回の3回目。#1から読む)

「伝説」のすべてを見守った水俣の美しい海

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ドロップキック3発で床柱を折った

〇「ジョージ高野がドロップキック3発で床柱を折った」(古舘)

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「それはないです。折れてないし、そんな柱もないです。飛び蹴りのようなことをするような人は見てません」(里美さん)

後藤達俊が日本刀を持って暴れた

〇「後藤達俊が日本刀を持って暴れ、壁に穴を開け、トイレを破壊した。部屋に戻った猪木を呼び出しに行ったが、いざ猪木が出てくると“社長! お疲れ様です”と態度を一変させた」(多数)

「日本刀はなかったです。本物はもちろん、模造刀もありませんし、飾ってもいません。それを持って暴れた人はいなかったはずです」(里美さん)

「壁は、壊れたところがあったかもしれません。それは私の父が修理担当で、ちょっとよく覚えていませんが…いずれにしても、建物自体にそう大きな被害はなかったです」(健児さん)

 後藤が日本刀を持ち出し暴れた場所については、当時の新日本プロレス社員が「まったく別の日で、場所は熊本市内の『本陣旅館』でした。同じ熊本県なので混同されているのでは」と語っている。

三面鏡が壊れて飛び散った

〇「三面鏡が壊れて飛び散ったのをはっきり見た」(藤波)

「三面鏡はないです、各部屋に鏡はありましたけど、それが割れていた記憶はありません」(里美さん)

トイレにワカメが詰まり吐瀉物が溢れ出た

〇「トイレに吐く選手が続出し、ワカメスープのワカメが詰まり、溢れ出た吐瀉物が階段を流れ落ちていった。小便器に吐く選手もいて水道管が壊された」(多数)

「トイレは壊れなかったですけど、手を洗う場所に吐いてしまったもんだから、そこが詰まって流れなくなり、確かに6階から下の5階のほうに、階段をつたって水が流れていきました。トイレから階段まですぐでしたから。男子トイレの小便器が吐いたもので詰まったのも事実です。ただ、私たちも必死で止めましたので、5階より下には流れていないと思います」(健児さん)

「ワカメが詰まるっていうのはどうかしらね。スープだったら普通は乾燥のワカメを使ったんじゃないかと思うけど…それはスーパーで必ず売ってるからね」(里美さん)