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「前田さんが猪木さんのところで何かを訴えていたんです」 旅館の主が振り返る昭和プロレス史の伝説“旅館破壊事件”が起きるまで

「前田さんが猪木さんのところで何かを訴えていたんです」 旅館の主が振り返る昭和プロレス史の伝説“旅館破壊事件”が起きるまで

新日本プロレス「熊本・旅館破壊事件」の真実#2

2021/07/11

件の事件のきっかけ「ワカメスープ」

「このあたりでワカメはとれますか?」

 そう質問すると、奥さんの里美さんが教えてくれた。

「ええ、春の少し前になると、地元の漁師さんが私たちに天然のワカメをくれましたよね。だけん、スーパーでも1月、2月には生ワカメが売っていたんじゃないかしらねえ」

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 藤原はこの日、試合が組まれていなかった。本人は事件が起きた場所について「出水市だった」「当日はマッチメーカーが気をきかせて(早く宿舎に戻れる)第3試合に組んでくれた」などと語っているが、いずれも事実ではない。出水市は水俣市と隣接しているが熊本県ではなく鹿児島県で、ドン荒川の出身地だ。ちなみにこの日、ドン荒川は第4試合で金秀洪と対戦し、荒川の母も試合を観戦。荒川は勝利している。

「関節技の鬼」こと藤原喜明。この日はちゃんこ番で試合はなかった

 旅館に戻ると、さっそく焼肉宴会の準備に取りかかった藤原。ここで、後に問題を引き起こす元凶とされた「ワカメスープ」が用意されたのは、メインが焼肉だったことを考えれば間違いなかったと思われる。

試合が終わって続々と人が集まり、宴会がスタート

「料理はうまかったよな、この人。感心したのを覚えてます」(健児さん)

 藤原はプロレス入りする前、焼肉店で働いていた時期がある。焼肉の準備はお手のものだったはずで、このあたりも十分納得できる証言だ。

 新日本プロレス水俣大会(水俣市体育館)は1月23日午後6時30分に試合がスタートした。気象庁の記録によれば、試合開始時は強い雨が降っていたものの、気温は15度と季節外れの暖かさだった。

「夜になってですね、試合が終わって猪木さんや藤波さん、坂口さんが戻ってきて、別の宿舎から前田さんたちもやってきて、宴会が始まったと思います。そういえば、上田馬之助さんも旅館に来たのですが、すぐに帰ってしまったのは覚えています」(健児さん)

 当時、上田馬之助と交際していた女性(のちに結婚)の経営するスナックが熊本市内にあった。そう考えれば上田の離脱も不自然ではない。

当時、ベビーターンしていた上田馬之助だが宿泊先は外国人選手と同じだった

「私たちはあと片付けをするために待っていたんですけどね、焼肉が始まってすぐだったですかねえ…様子がおかしくなって」(里美さん)

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