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《ワクチン接種翌日に急死》「主人は泡をふいて搬送先で息絶えた」遺族が訴える厚労省“副反応調査”の問題点

《ワクチン接種翌日に急死》「主人は泡をふいて搬送先で息絶えた」遺族が訴える厚労省“副反応調査”の問題点

genre : ニュース, 社会

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 7月8日には、高津署で遺族と警察、哲郎さんの遺体を検案した医師とで「話し合い」の場がもたれた。そこで医師は「ワクチンによるアナフィラキシー反応(臓器などにアレルギー反応が出る症状)は確認できておらず、厚労省に報告をあげる必要はない」と再び説明したという。遺族側が「アナフィラキシーではなくても報告されているケースもある」などと説得すると、医師は当初は「医者によって判断は違う」と答えていたが、最後には「遺族がそこまで言うなら」と厚労省に報告することに決まったという。

家族に渡された診療記録の一部

「ワクチンの副反応を調べているはずなのに、遺族がお願いしないと報告さえされないのはなぜかと思いました。厚生労働省に報告されたことで、父の死がせめてワクチンの副反応を調べるための何らかの助けになることを望んでいます」(哲郎さんの三男)

1カ月が経った今も遺体を火葬できていない

 哲郎さんの家族は、死亡から約1カ月が経過した現在もまだ哲郎さんの遺体を火葬できずにいるという。

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「父の死因について、やっぱりまだ納得できない部分がありまして……。死因について詳しく知りたいと思い、警察側が行った(遺体の)検査記録の詳細をもらおうとしたのですが、警察は『先生に聞いてくれ』、医者は『警察に聞いてくれ』とたらい回しにされてしまいました。いま私たちの手元にあるのは、“虚血性心疾患による冠状動脈硬化症”と簡単に死因が書かれた1枚の紙切れだけです。これでは父の体に本当は何があったのかわからない。どのような検査をしてどのような結果だったのか。このまま、警察から記録の詳細がもらえないままだったら、どこか別のところで改めて遺体を調べてもらうしかないのではないか。そう思って父の遺体を未だに火葬できずにいます」

亡くなった哲郎さんの思い出を語る妻 Ⓒ文藝春秋/撮影・宮崎慎之輔

 哲郎さんの妻が振り返る。

「主人は中学校を卒業してから50年間、大工一筋でした。昭和49年に知人の紹介で知り合って、3人の子供を一緒に育ててきました。喧嘩をすることもありましたし頑固なところもありましたが、本当に優しい人でした……。数年前に大工を引退してからは家の天井まで届くような大きな絵を描いたりして、二科展でも入選したんですよ。自慢の夫でした」

哲郎さんの描いた絵。二科展への入選経験もあるという

検証してもらってこそ、父の死も誰かの役に立てる

「ワクチンで救われる命がたくさんあるのも分かります。一方でワクチンに不安を持っている人もいるし、少ない症例かもしれないけれど副反応が強く出る人もいます。だからこそ、国にはしっかりとデータを集めて検証してもらいたいんです。因果関係があったにせよなかったにせよ、検証してもらってこそ、父の死も誰かの役に立てるのではないかと思うんです……」

 哲郎さんの三男は最後にこう語ると、静かにため息をついた。

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