昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/07/22

 ・登場人物たちが社会の底辺で暮らしながら、重苦しすぎず、文章がきれいで、すっきり読みやすい。表紙も綺麗で、タイトルの「八月の雪」ってどういうことだろうと目を奪われる。

 ・どの話もコンプレックスを持った人が主人公で、それぞれの葛藤に科学が寄り添っているのが印象的。

 ・どの短編も読みながらやさしい気持ちになれる。

議論の様子を記録したグラレコ Ⓒ中尾仁士、杉浦しおり

脳内で映像化したら非常に面白い

加藤シゲアキ『オルタネート』

 ・他の4候補作は悲しい結末だったが、これはハッピーエンドで良かった。

 ・高校生限定のアプリという発想が画期的。ただ、視点がクルクル変わって、はじめは混乱した。

 ・綺麗でカジュアルな青春小説。装丁にアプリのアイコンがあしらわれていて良かった。視点人物3人中2人はそこまでオルタネートというアプリに関わっていない気がした。

 ・いや、3人の間で視点が変わることが「オルタネート」を示しているのでは。マッチングアプリというと恋愛しかないのかと思って読んだが、他の人間関係も含まれていてよかった。

 ・群像劇としての完成度が高く、いらない人物がいない。また話の展開の速さ、ざわざわした感じこそがこの作品のよいところ。高校生に読んでほしい。

 ・加速感がある。作品の構造がよく練られていて、別々の線が最後に一気に1本になる。ただ、普段本を読まない人には冒頭に難解な語も多く、読みにくいかも。

 ・視点が変わるのは読みづらいとはいえ、各人物を掘り下げるためにはこの書き方しかない。そのおかげで共感できた。難しく思えても、ある地点まで辿り着けば、そのあとは一気に読ませる。普段小説を読まない人でもそこまでいけば読める。

 ・自分は普段あまり本を読まないが、この作品を脳内で映像化してみたら非常におもしろかった。

 ・最後の文化祭のシーンの勢いがすごく、読むスピードも上がる。純粋に楽しめる。作品全体が一つの文化祭のようだ。マッチングアプリや同性愛などさまざまな要素が詰め込まれているが、SNSやそれを通じた新しい人間関係に対する説教臭さがない。

ラストが衝撃的

西條奈加『心淋し川』

 ・時代物としては入りやすいが、江戸時代の話なので、どうしても馴染みのない単語が多く、全ての高校生が楽しめるのか疑問に感じた。

 ・短編集ということで読みやすい。伏線が回収され、ラストは衝撃的。「冬虫夏草」の嫁と姑の関係は、現代にも通じる。

 ・「冬虫夏草」には人間らしい感情が描かれていると思った。自分も心町に住んでいるような気分になれた。主人公が同世代の話もあって物語に入り込める。

 ・やるせないまま生きていく人たちというのがこの本のテーマだと思うが、自分たちには少し早いという気もした。もう少し色んな経験をしてから読みたかった。