犬は時として、人や他の動物に対して攻撃的な態度を見せることがあります。たとえば普段はおとなしい犬でも、何かを察知してうなり声を上げたり、吠えたり、噛み付いたりすることもあります。また、神経質、怖がり、過去にトラウマを抱えているなど、犬の性質や性格、経験によって攻撃的になるケースもあります。

 環境省の統計資料「動物愛護管理行政事務提要(令和元年度版)」によると、犬による咬傷事故は年間4249件、そのうち公共の場での発生が2421件。あくまで報告があったものだけなので、実際にはさらに多くの事故が起きていることが予想されます。

 もちろん、すべての犬が事故を起こすわけではありません。しかし飼い主の過信や不注意が、時には訴訟にまで発展する大事故を招くこともあります。

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犬に噛まれて「33針の大怪我」を負った女性

 今から6年前。兵庫県に住む30代女性のAさんは、知人と飲食店で楽しい時間を過ごしていました。その店はテラス席でも飲食ができ、犬連れでもできます。彼女が店内から外を覗くと、1匹の犬と女性の飼い主の座っている姿が見えました。

 犬好きのAさんは、早速その犬を見に行きました。飼い主に話を聞くと、ロットワイラーという犬種で、過去に警察犬の訓練を受けた犬であることがわかりました。

ロットワイラー ©iStock.com

「触っても大丈夫ですか?」

 Aさんが尋ねると、飼い主も「大丈夫ですよ」と言います。犬をなでながら、話を続けました。

 ところがです。一段落ついて彼女がお礼を言ってから店内に戻ろうとすると、ロットワイラーが突然飛びかかってきました。Aさんは何が起きたかわからないまま、強い衝撃から地面に倒れ込んでしまいます。

 立ち上がろうとすると自分が血だらけであることに気が付きました。どうやら噛みつかれたようです。それを見た飼い主はあまりの光景に驚いたのか、愛犬を抑えることもなく呆然と立ち尽くしていました。

 その後、すぐ救急病院に搬送されたAさん。傷はひどく、右目の下から唇までがざっくりと裂けていました。涙腺も噛み切られており、あと3mmずれていたら失明したといいます。彼女の傷は33針も縫わなければいけない大怪我になりました。