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川に浮かぶ遼太の頭が時折見えなくなる

 3人は護岸斜面から、暗い川の中を泳いでいる遼太を眺めていた。虎男が言った。

「なんか面白くね」

 川辺に軽口が響く。剛が言う。

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「あのままじゃ、おぼれるぞ」

 川に浮かぶ遼太の頭が時折見えなくなる。

「反対岸まで行っちゃうよ」

 剛が叫んだ。

「おーい、カミソン、もどってこい」

 暗い川に声が響く。虎男も対岸へ逃げられたら困ると思って呼びかけた。

※写真はイメージです。 ©iStock.com

「もどってこい!」

 波の影がゆっくりと近づいてきて、遼太が全身から水を滴(したた)らせて這い上がってきた。おそらくすでに低体温症に近い状態に陥っていたはずだ。

 虎男は剛にカッターを差し出し、言い放った。

「おまえもやれよ」

 切れ、と言われているのだとわかって当惑した。

「で、できないよ」

「やれっつってんだろ!」

「無理だよ!」

「ふざけんな、やれ」

 何度か押し問答をしていると、虎男が激昂して剛をその場に押し倒した。馬乗りになり、血に染まったカッターの刃先を首につきつけて叫ぶ。

「やれって言ってんだろ。やらなきゃ、おまえも切るぞ!」

 剛は、カッターを握る虎男の腕をすんでのところで押さえた。

 そんな2人の間に、星哉が割って入った。

「やめとけよ」

 仲間割れしている場合ではないと忠告したのだ。

 虎男はカッターを持つ手を下げて離れると、立ち上がった剛に言った。

「時間見せて」

 剛が自分の携帯電話を差し出す。すると、虎男はそれを奪い取り、自分のポケットに突っ込んだ。そしてもう一度カッターを突き出した。

「ほら、やれよ」

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