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うつ伏せになったまま、動かなくなった

 虎男がさらに命じた。

「反対側もやれ」

 ナイフを逆の手に持ち換え、同じように首の右側も切った。

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「もう、いいでしょ」と剛が言う。

「ああ」

 虎男はカッターを受け取り、次に星哉に手わたした。カッターは血と脂(あぶら)で濡(ぬ)れていたにちがいない。星哉はカッターで切るより先に遼太の髪をつかみ、護岸斜面のコンクリートに思い切り頭を叩きつけた。ゴッという音が響く。

 剛はこれから起こることを予想していたたまれなくなった。

「俺、見張りに行ってくる」

 剛は逃げるように1人で土手の方へ歩いていった。その最中、背後から再び星哉が遼太の頭部をコンクリートに叩きつける鈍い音が聞こえてきた。

 護岸斜面では、星哉が四つん這いになった遼太にカッターを持って近づいていった。そしてそれをふり下ろした。相当の力が入っていたらしく、首に当たった途端に刃が折れ、それが転がる金属音が暗闇の底でする。

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「刃、拾う?」と星哉は言った。

「いや、いい」

 護岸斜面で遼太はうつ伏せになってぐったりとしていた。星哉は虎男にカッターを返した。

 虎男は覚悟を決めて受け取った。ここまでやったら、とどめを刺すしかない。そんな決意めいた思いがあったのかもしれない。新しい刃を出し、倒れたままの遼太の左側の首をカッターで力いっぱい切り裂いた。刃先が「ずしん」と皮膚の奥まで刺さる感触があった。

 瞬間、遼太の悲痛な叫び声が上がった。

「ああー!」

 うつ伏せになったまま、動かなくなった。

 虎男は見下ろしながら、手に残った感触から、「死んじゃったな」と思った。土手へ行っていた剛が、悲鳴を聞きつけて青い顔をしてもどってくる。虎男はつっぷしたままの遼太を見ていてだんだんと怖くなり、星哉に言った。