文春オンライン

2021/07/23

面白い競技のみを2~3時間に濃縮した大会をやりたい

――「仮に僕が大会を主催して、お金の制約なく自由に選手を招待できるとしても、面白みを損いたくないから、誰も彼も無限に招くことはしない」との持論もお持ちです。

山本 今の日本のパラ陸上の試合は観客に面白さが伝わりにくい。種目も沢山あり、速い人と遅い人の差も大きく、場内に何個も似た競技があったりして、どこを見たらいいかも分かりませんから。

 だから面白い競技のみを2~3時間に濃縮した大会をやりたいんです。例えば、車いすの1500mなんて3分未満だけど凄く面白いし、視覚障害の100mも「伴走者と共に10秒台で走る」姿は見て楽しめるので、凄く盛り上がると思います。

©山本篤

 ただ、日本だと「選手全員がそこの試合に出られないのは不平等だ」といった声が出てくるので、そういう大会はしにくい。

 だから「山本篤杯」みたいな形でやれたら一番ですね。

「義足はズルい」の声は「羨ましさの裏返し」

――山本選手は義肢装具士の資格に加え、義足と健足の動きを力学的に比較分析した論文も書かれていますね。

山本 走る動作がどうなっているのか、自分の体を用いて計算しました。毎年データを取って現状を把握し、それをプレーにフィードバックして改善に繋げています。

――2014年に義足の陸上走り幅跳び選手マルクス・レーム氏がドイツ国内の大会で健常者を抑えて優勝し世界を驚かせました。今年6月には、リオ五輪の金メダリストを24cm上回る8m62cmを記録しています。義足が健足を上回る事態も起きつつある現状をどう感じますか?

山本 アスリートとして大変嬉しいです。障害を負うこと自体はネガティブでも、それにより健常者を上回れるなら、むしろその部分では進化したとも捉えられる。障害をプラスのイメージに転換できうるという意味では素晴らしいことです。

――健常者からは「ズルい」といった声も出そうです。

山本 そうですね。でもそれは裏を返せば「羨ましい」という意味じゃないですか。

©山本篤

――具体的に、どのような状況で義足が有利になりがちなのでしょう。

山本 義足は、エネルギーを地面に伝えてその反作用を走者に返す力が強いので、走り幅跳びでは、踏切って足を伸ばす部分だけに注目すると義足の方が理論上加速を得やすい。実際、既に検証が始まったり、世界記録を超え得る記録が出始めたりしています。