ワクチン接種確認は自己申告だけ
組織委員会が提示する基準が曖昧なのは、最大の関心事であるワクチンについても同様だ。
IOCは、大会開催までに関係者の7~8割がワクチン接種済みと発表している。しかし、その根拠はあまりにも危ういと感じられる。
6月上旬にIOCからワクチン接種に関するアンケートが筆者にも届いたが、「ワクチンを接種しましたか」という質問にイエスかノーで答える簡単なもので、接種証明書などを添付する必要はなかった。つまり完全なる自己申告制で、虚偽の答えをしてもIOCや組織委員会には分からないのだ。
イギリス紙「ガーディアン」の記者が、5月頃に「記者証などにワクチン接種済みのマークなどを入れる形にすれば、ボランティアや大会関係者への海外メディアの不安が少しは軽減されるのではないかと思う。それをIOCに提案している」と話していたが、残念ながらその意見は通らなかったようだ。
オリンピックのアメリカ代表を決める陸上競技の選考会では、記者証を申請する時にワクチン証明書を要請された。もちろんワクチン未接種者や、2回目の接種から2週間が経過していないメディアは記者証は与えられなかった。
観客も入場の際にワクチンパスポートの提示が必要なほか、ワクチン接種済みの人と未接種者の席を分ける徹底ぶりだった。
海外メディア=ダーティ?
余談になるが、組織委員会から送付されたメディア向けのプレイブックQ&Aの中に、日本のメディアから出たと思われるこんな質問があった。
「国内メディアと海外メディアは、入り口、セキュリティ、トイレなどは別々にしてもらえるのでしょうか。取材現場でも仕切りはされますか。ミックスゾーンでは『クリーン(清潔)』、『ダーティ(不潔)』セクションに分けられますか」
この表現に海外メディアは少なからずショックを受けたようだ。
公式な文書で「海外メディア=ダーティ(不潔)」と捉えられる表現が使用されていること、また海外からの渡航者だけがウィルスを撒き散らしていると考えている国内メディアの他人事感にも危うさを感じてしまう。
6月下旬に静岡放送のスタッフ2名が、静岡県島田市で行われていたシンガポールの卓球代表の事前合宿を取材し、後に2名ともPCR検査で陽性反応が出たことも話題になった。静岡放送によればスタッフはワクチンも未接種だったといい、シンガポール側が激怒したという報道も頷ける。