「ちゃんと開催しようという努力が一向に感じられない」
日本に入国した海外メディアは、スマートフォンのGPSで組織委員会に常に居場所を監視されることになる。しかしその情報がどのように使われるのか、管理されるのかメディア側には明確にされていないことへの不安もある。
イギリス紙「ガーディアン」の記者は「組織委員会からの連絡はすべてが後手後手。イギリス代表の事前合宿取材をする予定だったのに、タクシーが使えないどころか代替方法の提案もなくて困っている」とこぼしていた。
米国の通信社の記者は組織委員会への不満をこう語る。
「記者は競技だけではなく、IOCや組織委員会、スポンサー、ドーピング問題、開催都市の状況など五輪にまつわる様々なことを取材するのが仕事だが、今回は競技以外の取材はほとんど不可能だ。そもそも五輪中止を決断すべきタイミングは何度もあった。それを無視して開催を決断したはずなのに、組織委員会からはちゃんと開催しようという努力が一向に感じられない。いまだに開催可否についての話題が出ている状態で、東京の意図が理解できない」
とはいえ、コロナ対策や報道陣の監視体制など、表面的には組織委員会の管轄になっているが、実質は国が指揮をとっており、組織委員会も振り回されていることは容易に判断できる。彼らも上からの指示を受け、日々混乱の状態にありながら、なんとか対策を講じ、解決策を見出しながら進んでいる。
組織委員会から届くメールにも内部の混乱がありありと浮かんでいる。休日や深夜にメールが届くことも多く、現場スタッフの労働環境も心配だ。
オリンピックそのものに反対する意見は日増しに大きくなっており、海外メディアへの視線が厳しいことも理解している。だが取材したメディアのほとんどは東京の状況を把握し、このような状況下での開催へ同情の気持ちを寄せている。そしてオリンピックを開催すると決めたのならば、組織委員会、そして国がもう少しきちんと対応してくれれば、というのが報道陣の共通した願いである。