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初っ端に連続で客を取らせる事情とは

 家出をして管理売春業者につながるような少女らには、生育環境に暴力や耐え難い支配環境があることが多く、稼ぎだけでなく寝泊まりする場所やスマホのSIM貸しといった生活のインフラの手助けもする業者には「私的なセーフティネット」と言える側面もある。が、やはり綺麗ごとじゃない。

 援デリ業界に生きる少女らを描いた拙著『里奈の物語』を原作とする漫画『アンダーズ〈里奈の物語〉』でも、里奈が援デリにデビューした際に同じく新人として働いていた少女が、「こんな連続で客取ってこんなに辛いなんて聞いてない」とボヤくシーンがあるが、なぜキャストが消耗するようなことを敢えてするのか?

『アンダーズ〈里奈の物語〉』より ©文藝春秋

 それは嬢とスタッフや経営サイドの立場関係を一定まで対等に保とうとする一般の性風俗とは大きく違って感じたが、これを「ビジネスモデルが全然違うから」と説明した業者もいた。

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「援デリは、特に未成年の援デリは、10勤務日以上続いたら古株だからね。つまり、週に5勤で2週間続いたら、もう古株。そのぐらい定着率が低いし、せっかく時間とって面接しても、1出勤とか2出勤で飛ぶ子が大半。だから、本人もキツいだろうけど、初っ端につけられるだけ本数つけて稼がせてやるっていうのは、女の子にとっても僕らにとってもメリットあることでしょ。

 あと業者にとって一番大事な嬢っていうのは、出勤率が多少低くても約束した出勤日にきちんと出てこれて、飛ばないレギュラーの子。夏休み限定で出稼ぎの子とか、悪いけど僕ら全然信用してないし、そういう子が稼いでくれた分をレギュラーの子に還元するのは、こっちの人情でもあるでしょ」

生き残ることができる一握りの「レギュラー」

 援デリ業者の取材を始めたころは、この「レギュラーの子」の意味するところがいまいち理解できなかった。が、要するにこれは、業者との間に雇用者と被雇用者、支配者と被支配者という関係性ではなく、利害関係を共にする共犯関係にある嬢のことだ。

「還元する」との言葉があったが、業者の中には夏季限定で働かせたキャストの売り上げをレギュラー嬢が抱えたホスクラの売掛解消に回したエピソードもあったし、そもそも売り上げのバック率を通常折半としている業者が「レギュラー嬢では3:7(嬢の取り分が7)」と不平等な設定にしているケースも多かった(かなり多かった)。