またこの季節がやってきた。7月半ばから9月までは、未成年を扱う管理売春業「援デリ」において、最大の繁忙期となる。理由は想像に易い。この時期、学校が夏休みとなることを機会に家出生活と出稼ぎ的な売春を目指す少女が増加し、それに対する面接ラッシュ、さらに書き入れに応じた新規部隊の立ち上げが相次ぐ時期だからだ。
面接での採用基準や条件交渉は「素行」
僕自身、かつて管理売春の現場ルポに注力した頃には、例年7月末が取材のピークだった。脳裏によみがえるのは、エアコンの冷気と煙草の煙に満ちた昭和ムードの喫茶店(面接会場)に漂う、火薬が焦げたようにピリピリした空気だ。
業者にとって、昨日今日のタイミングで家出してきた少女を管理売春の場に雇用すべく面接するというのは、面接そのものがリスキーな行為。補導員や警察の生活安全課の目もあるし、親が捜索願を出しているリスクもある。だからだろうか、新人面接を重ねる業者に対し、その採用基準や交渉条件について尋ねた際に決まって返ってくるのは「素行だね」だった。容姿でもない、経験でもない、素行なのだ。
「バイボー(売春防止法)だけでもヤバいのに、未成年使うんだから、一番大事なのはその子を使ってる間にその子が補導されないこととか、親がガチで捜索願出してるようなケースじゃないこと、あとは部隊辞めた後に別件で補導されたときなんかに俺らのことをうたわない(密告しない)ってことでしょ」
性器に薬物を摺り込む少女も
要するにポイントは、その少女を雇うことが業者の摘発につながらないこと。ということで、まず重視されるのが、今の令和の世ではありえないが「路上喫煙をしない」とか、テンションが高すぎて悪目立ちしないとか、薬物常用だったり酒を飲むと暴れることがない等々、自ら補導を回避する意識がしっかりしていることなのだった。
なお、そうして最低限の条件をクリアした後は、買春客から受け取った金の何割を客付けしたキャスティングスタッフにバックするかを決定したうえで、「明日の集合時間に集合場所に来て」で即日採用が基本。さらに出勤初日は時間と本人の体力が許す限りの本数(客数)を付けるというのが、面接から採用直後の典型的なパターンだった。
「体力が許す限りの本数を付ける」というのは、かなり過酷な風景だ。全然、綺麗ごとではない。かつての取材時、客のもとに向かう際に性器にケタミン(麻酔効果のある違法薬物)を擦り込んでいるという少女の話に、絶句した。