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山内一弘と佐藤輝明の最大の共通点

 さて、この「.257、31本、94打点、10盗塁、OPS.846」の成績を見て、なんとなく佐藤輝明っぽいと思いませんか? 8月11日時点で、佐藤は「84試合、.267、20本、52打点、5盗塁」。143試合に換算すると、「.267、34本、89打点、8盗塁、OPS.833」。打率はやや低いが本塁打は30本を超え、盗塁も多少しています。

 さらに、二人とも外野手で、背番号は8。顔も、どことなく似ているように思います……。両者ともに出身高校は強豪校ではなく、山内は起(おこし)工業高校(愛知・一宮)が生んだ唯一の、佐藤は仁川学院高校(兵庫・西宮)が生んだ唯一のプロ野球選手です(ちなみに起工業高校のOBには鳥山明氏がいるとか)。

 そして最大の共通点は、「前年はチームに所属しておらず、入団1年目でOPS8割以上の日本人」であることでしょう。新たに入団した日本人選手が、いきなりOPS8割以上をマークするのは、チームにとって大きな上積みになります。このまま佐藤がOPS8割以上でシーズンを完走することができれば、山内同様に「Vの使者」になれるかもしれません。

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 では、佐藤と山内の相違点は何か。大きく異なるのは、四球と三振の数だと思います。山内は1964年、73四球、51三振であるのに対し、佐藤は84試合で16四球、121三振。「まあ、まだ22歳なんだから、のびのびと振ればいいんじゃないの」と考える方もいるかもしれませんが、1954年、22歳のときの山内の成績は、.308、28本、80四球(リーグトップ)、72三振。いまの野球は1954年当時よりもリーグ全体の三振率がかなり上がっているのはたしかですが、四球はもう少し増やしたいところでしょう。もし来年、四球の数が山内並になり、それを継続させることができれば、将来山内並のRCWINを叩き出す選手になれるかもしれません。

 さて、1964年の阪神と、2021年の阪神。どちらが強いでしょうか。

 1964年の阪神は、29勝を挙げたバッキーと22勝の村山が二本柱で、失点はリーグ最少。一方得点はリーグ3位でした。得点数1位は、日本新記録(当時)の55本塁打を放った王がいた巨人でした。ただ、失点3位(少ない順)、得点は僅差の2位になった大洋も強く、最終的には優勝した阪神と大洋の差はわずか1ゲーム。大洋との最終決戦を制して逆転優勝を遂げた形になりました。

 一方、2021年の阪神は得点数4位、失点は2位(8月11日現在)。2位とのゲーム差は2.0。接戦を制して首位の座を守っているようで、どうやら1964年よりも安泰、とはいえないようです。チームの優勝を確実に手繰り寄せるために、佐藤にはさらに成長して、山内のOPS(.846)を超えるような成績を残すことを期待したいところです。

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