文春オンライン

「『酒と恋には酔って然るべき』片手に一人カップ酒晩酌、始めたいと思います!」宇垣美里が“日本酒とオトナの恋”に酔いしれる

『酒と恋には酔って然るべき』を読む

2021/08/04
note

体力気力のなさがリアルな恋愛模様

 お酒トリビアと松子の恋愛模様とのバランスの良さも絶妙。オトナな彼らの恋愛は、アラサーならではのかっこつけてしまう感じ、体力気力のなさがリアルだが、焦燥感をいたずらに煽るようないやらしさはなく、どこかカラッとしていて気持ちが良い。

 会話のテンポも小気味よくコミカルで、パンチラインが目白押しだ。「松子 人生は常にスタートなのよ」なんて、なかなかにはっとさせられた。

©はるこ(秋田書店)

 なによりも主人公の松子の人生の楽しみ方が可愛い。ときめきを求めながらも一人の時間もめいっぱい満喫していて、重陽の節句にはお酒に食用菊を浮かべたり、お正月には初詣に金箔を持っていってセルフで足したり、四季の移ろいもお酒と共に丁寧に味わい尽くしている。

ADVERTISEMENT

セルフで金箔を足す松子 ©はるこ(秋田書店)

 そんな松子を振り回す普段不愛想なのに酔うと可愛く思わせぶりな後輩や、年上でスマートだけど女友達との距離がやたらと近い彼氏など、男性キャラも魅力的かつ罪深い。彼らのリアルさや厄介さは社会人になったからこそ理解できる気がする。

 一方の女性キャラはさっぱりしていて常識的でみんな愛おしい。友達になって飲みに行ったら絶対に盛り上がること間違いなし。

 旅先でもお土産として日本酒を選び、なんならお酒を飲むために旅先を決めるような松子の姿を見るうちに、状況が落ち着けば行ってみたいところがいっぱいできた。作中に登場する個性豊かな全国津々浦々の日本酒、それらをその土地のものと一緒に食べたら、どんなに美味しいことだろう。

 旅に出ることはかなわなくとも、電子レンジでお燗をつけたり、出汁で割ったり、スイーツをお供に日本酒ロックにウイスキーをたらして頂く、なんてのは手軽にチャレンジできそう。

 しばらくは松子のように日本酒浸りの日々が続きそうです。

酒と恋には酔って然るべき(1)(A.L.C.DX)

はるこ ,江口 まゆみ

秋田書店

2018年7月13日 発売

「『酒と恋には酔って然るべき』片手に一人カップ酒晩酌、始めたいと思います!」宇垣美里が“日本酒とオトナの恋”に酔いしれる

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー