トップ棋士の妻がその日常を描く異色の将棋漫画『将棋の渡辺くん』(講談社)
。作者である伊奈めぐみさんへのインタビューの後編となる本稿では、その内容について聞いていきたい。まずは、そのネタの集め方から。なんでも、連載開始当初から「日常」「将棋」「ぬいぐるみ」という3つのフォルダに、日頃からネタをストックしているのだという。(全2回の2回目。前編を読む)
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ぬいぐるみは「もうわからないくらい増えてますね」
伊奈 ブログを書いているときから、こういったフォルダにネタを入れていました。私の場合、今も昔も、その日にあったことをすぐに描いているわけじゃないんです。ある程度そのフォルダに入れておいて、時間がたってから描くスタイルですね。
――このフォルダの「日常」と「将棋」はわかりますが、「ぬいぐるみ」がメインフォルダになっているのは、やはり変わっていますよね。これはどうしてですか?
伊奈 それはもう、初代担当編集者の趣味ですね(笑)。
――そうですか(笑)。伊奈さんが、初めて見た渡辺名人の「ぬいぐるみエピソード」を教えてください。
伊奈 私が「小さい頃に犬を飼っていたんだ」と話すと、彼が「俺も実家に犬いるよ」って言うんですが、実際には犬のぬいぐるみだった――という話ですね(単行本1巻収録。《ぬいぐるみのこと犬って言うの普通だし!!》と叫ぶ渡辺名人の描写も楽しい)。
――今、ぬいぐるみはどれくらい、いるんですか?
伊奈 もうわからないくらい増えてますね。漫画に描いてから、どんどん送られてくるようになって。
――「すみっコぐらし」のぬいぐるみがファンの方から送られてきた話も描いておられましたね。
伊奈 「すみっコぐらし」は、あれから自分でも買ってるんですけど、好きだというと、どんどん送られてきます。
――それでもう数はわからなくなったと。
伊奈 そうですね。メインの子はそれほど変わらないですが「いるだけの子」は、どんどん増えますね。
――「日常」「将棋」「ぬいぐるみ」がネタの3本柱ですが、やはり連載を続けていくとネタは尽きてくるものですか。
伊奈 今までは、ネタ探しが楽で、描くのが大変だったんですが、最近はネタ探しに苦労しています。だから取材に行くこともあります。