この漫画で全部つながったような気がしますね
――じつは私の息子も不登校で。
伊奈 いまおいくつですか?
――中3です。だから伊奈さんのことを気にしているようなこともいいますし、私もなんか励まされる気持ちになります。きっとこうして楽しい漫画を描いておられるだけでも、誰かを勇気づけたり、励ましたりしているのではないでしょうか。
伊奈 そうですね。そういう意味では、昔、不登校だったことも、将棋を少しやったことも、絵はうまくならなかったけど美大に通ったことも、この漫画で全部つながったような気がしますね。全部中途半端だったけれど、つながったのかな。
私が息子も不登校だと告げると、伊奈さんはインタビューが終わったあとでも、どういった子なのかといろいろ気にかけてくださった。そんな話を息子にしたら、彼もまた笑顔を見せていた。ひとつの作品は、思いがけないところで、人に笑顔を与えるものだ。
他の漫画を描いてみたいという気持ちはありますが
最後に『将棋の渡辺くん』の他に描いてみたいものや、これからの目標などについてうかがった。
伊奈 他の漫画を描いてみたいという気持ちはありますが、画力にしても、話を作る能力にしても、自分には難しいだろうなと思っています。挑戦はしてみるかもしれませんが、難しいかなと。
――絵を描くのは楽しいですか?
伊奈 うーん。楽しくはないかな。やっぱり苦手意識がありますからね。一般の人とくらべれば、絵はそれほど下手ではないでしょうけど、でも漫画家のなかでいえば、短所というか、かなり画力が下。そうすると正直辛いですよ。この話だから、この絵でもなんとか成り立つけれど、ほかの漫画だと辛い。だから先のことはわからないですね。
――ちなみに、もしストーリー漫画を描くとしたら、どんなジャンルですか? ミステリーとか恋愛とかいろいろありますが。
伊奈 あぁ……。恋愛は絶対いやですね。
――わははは(笑)。そうですか。
伊奈 もうちょっと現実的な話がいいですね。