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 そして、新型コロナの流行が始まった2020年2月3日、石正麗らは、「新型コロナウイルスのゲノム配列は、SARSと80%一致し、雲南省で採取されたコロナウイルスRaTG13は96.2%一致し、新型コロナに最も近い」と発表。当然、世界中の研究者が、RaTG13の起源について情報を求めたが、採取場所や時期に関する石正麗らの説明は二転三転する。

なぜウイルス名を変更したのか?

 ドラスティックの最大の功績の一つは、「RaTG13はRaBtCoV/4991と同一だ」と突き止めたことだ。石正麗は、「分かりやすくするための名称変更だった」と釈明したが、おそらく「RaTG13と墨江の洞窟(2012年に感染が起きた)が関連づけられるのを避けるため」の名称変更だろう。

 武漢ウイルス研究所が2010年から2015年までに採取した630ものコロナウイルスのデータを分析したドラスティックは、RaTG13に酷似したウイルスが他にも8つ(いずれも墨江の洞窟で採取)あることも突き止めた。

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 ドラスティックのウイルス学者のメンバーは、「RaTG13、RaBtCov/4491および雲南省南部・墨江の山奥の銅鉱山の掘削路との繋がりをあぶり出したことで、RaTG13の遺伝子解析は、『新型コロナ発生後』(『ネイチャー』掲載の石正麗の論文はそう主張している)ではなく、それ以前、すなわち2018年に行われたことが判明した(その後、『ネイチャー』は石正麗論文に「付録」を挿入)」としている。

 いまや「武漢ウイルス研究所流出説」を検証するための重要情報を最も多く握るとされるドラスティックだが、有志で働くメンバーは、調査活動にどれほどの時間と労力を費やしているのか。匿名メンバーの一人(通称Billy Bostickson)は、「時給20ドルとして、昨年5月から7月だけで4万ドル分(2000時間)はつぎ込んだ」と話している。「細かく、忍耐を要する仕事で、本来なら国の秘密情報機関などがする仕事かもしれない」と話すのは、スペインの産業技術者のリベラだ。

 ドラスティックの活動から今後も目が離せない。

出典:「文藝春秋」8月号

 ドラスティックも含め、「流出説」再評価の動きを論じた近藤奈香氏の「武漢ウイルス『人工説』を追え!」の全文は、「文藝春秋」8月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

文藝春秋

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武漢ウイルス「人工説」を追え!