1年遅れの東京五輪が、ようやく日本にやってきた。

 とはいえ長らく続くコロナ禍で、最終的には無観客での開催が決定。開会式の当日も、舞台となる国立競技場の中に入れるのは選手と限られた関係者たちだけとなった。一般には「ステイホーム」での観戦が声高に叫ばれ、現地でこれまでの五輪のような盛り上がりは期待できない。新国立競技場の周囲や繁華街も、人通りはまばらなはず――だったが。#1では開会式が始まるまでの都内の様子をルポする。

 ©文藝春秋/宮崎慎之輔

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都庁前では「反五輪」のデモが…

 まずは都庁前で行われた「反五輪」のデモだ。聖火リレーの到着式が行われた23日正午頃、会場となった都庁の前には五輪中止を求めるデモ隊が集まり、太鼓のリズムとともに「オリンピックより命を守れ」「バッハは帰れ」と声を揃えた。周囲の人との“密”の状態など気にすることもなく、各々プラカードやチラシ、看板を掲げて声を上げていた。

都庁前に集まった「反五輪」デモ隊  ©文藝春秋/上田康太郎

 現場には複数のデモ隊があり、街宣車で福島の復興を訴えて「復興五輪なんて嘘じゃないか!」「オリンピックと一緒に全員お陀仏だ!」と叫ぶ人も。コロナ禍での五輪の混乱を如実に表わしている光景でもあった。

警察により規制線が作られていた ©文藝春秋/上田康太郎

 都庁の周囲には警察により規制線が張られていた。警察官が拡声器を使用し「関係者以外の方は、この先への立ち入りはできません」「歩道で立ち止まらないでください」と訴えたが、デモ隊の怒りは収まらない。「警察帰れ」「警察構うな」コールが巻き起こる。警戒を強める警察官と思い思いのプラカードを掲げるデモ隊が入り交じり、東京五輪の本丸は混沌としていた。

拡声器を持つ警察官も ©文藝春秋/上田康太郎