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「バンドマン時代の俺の“秘密”を書いてるの?」 YOASOBI・Ayaseに刺さった、カツセマサヒコ『夜行秘密』の“驚き”のストーリー

カツセマサヒコ×Ayase対談#1

note

「一度咀嚼して自分のことばと色味で出そう」

Ayase ええ、本当ですか! なんと光栄な。

カツセ 紹介していいですか?(Ayaseの前で1年前のツイートを読み上げる)

〈小説を音楽にするというその一点だけを忠実に表現するなら、読みこんで、リンクさせて、って時間と努力と知識である程度なんとかなると思うんだけど、そこから感じた想いやメッセージを自分のフィルターを通して、自分の中の芸術や色味と照らし合わせて自分の言葉で吐き出す、これは俺にしかできない〉

Ayase ははははは(笑)。これ、ツイートした直後に、母親から「あんまり偉そうなこと言わない方がいいよ」って連絡をもらったツイートですね。

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カツセ そうだったんですか(笑)。このツイートは僕にはすごく刺さったんですよ。

Ayase いやあ、偉そうなことを言ってしまい、本当に恥ずかしいです(笑)。

カツセ 全然そんなことないです。アルバムの14曲を1曲ずつ短編にしても面白くないから、14曲をひとつの大きな物語にしようと思ったときに「どうしたらいいんだろう」って悩んだんですが、Ayaseさんが書いていたように、「一度咀嚼して自分のことばと色味で出そう」と決めて書き始めたんです。

 

誰がやるのかによって形はいろいろ変わってくる

Ayase 本当に光栄です。ひとつの原作小説をアートとして表現するとき、誰がやるのかによって形はいろいろ変わってくると思っています。だから、僕が作った曲は、自分が作り出していない物語が核だとしても、完全に自分の色と形で形成しているので、「100%自分の作品」という気持ちで出しています。そういう思いを持つことが責任であり、原作へのリスペクトにもつながります。

『夜行秘密』執筆のヒントになったAyaseさんのツイートを読み上げるカツセさん

カツセ 「夜に駆ける」と原作「タナトスの誘惑」を往復して楽しめるのは、小説というフォーマットから音楽というフォーマットへ変わる過程において、Ayaseさんが原作のコアを保ちつつ、別のものに飛躍させているからなんですよね。さきほどツイートを紹介しましたが、Ayaseさんがやられていることをヒントにして、僕にしか書けない『夜行秘密』を作ろうと思い、書き切ることができました。前置きが長くなりましたが、つまり、今日はお礼を言いたかったんです(笑)。