「一度咀嚼して自分のことばと色味で出そう」
Ayase ええ、本当ですか! なんと光栄な。
カツセ 紹介していいですか?(Ayaseの前で1年前のツイートを読み上げる)
〈小説を音楽にするというその一点だけを忠実に表現するなら、読みこんで、リンクさせて、って時間と努力と知識である程度なんとかなると思うんだけど、そこから感じた想いやメッセージを自分のフィルターを通して、自分の中の芸術や色味と照らし合わせて自分の言葉で吐き出す、これは俺にしかできない〉
Ayase ははははは(笑)。これ、ツイートした直後に、母親から「あんまり偉そうなこと言わない方がいいよ」って連絡をもらったツイートですね。
カツセ そうだったんですか(笑)。このツイートは僕にはすごく刺さったんですよ。
Ayase いやあ、偉そうなことを言ってしまい、本当に恥ずかしいです(笑)。
カツセ 全然そんなことないです。アルバムの14曲を1曲ずつ短編にしても面白くないから、14曲をひとつの大きな物語にしようと思ったときに「どうしたらいいんだろう」って悩んだんですが、Ayaseさんが書いていたように、「一度咀嚼して自分のことばと色味で出そう」と決めて書き始めたんです。
誰がやるのかによって形はいろいろ変わってくる
Ayase 本当に光栄です。ひとつの原作小説をアートとして表現するとき、誰がやるのかによって形はいろいろ変わってくると思っています。だから、僕が作った曲は、自分が作り出していない物語が核だとしても、完全に自分の色と形で形成しているので、「100%自分の作品」という気持ちで出しています。そういう思いを持つことが責任であり、原作へのリスペクトにもつながります。
カツセ 「夜に駆ける」と原作「タナトスの誘惑」を往復して楽しめるのは、小説というフォーマットから音楽というフォーマットへ変わる過程において、Ayaseさんが原作のコアを保ちつつ、別のものに飛躍させているからなんですよね。さきほどツイートを紹介しましたが、Ayaseさんがやられていることをヒントにして、僕にしか書けない『夜行秘密』を作ろうと思い、書き切ることができました。前置きが長くなりましたが、つまり、今日はお礼を言いたかったんです(笑)。