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「バンドマン時代の俺の“秘密”を書いてるの?」 YOASOBI・Ayaseに刺さった、カツセマサヒコ『夜行秘密』の“驚き”のストーリー

カツセマサヒコ×Ayase対談#1

note

Ayase ありがとうございます。小説『夜行秘密』は本当に面白かったです。僕はバンドをずっとやっていたので、物語の中の岡本音色くん(バンドのボーカルを務める登場人物)と凜さんの同棲生活の感じが、すごくリアルでよかった。いい台詞やグッとくるシーンはいっぱいあるんですけど、中でも一番グサッときたのが、音色くんがお風呂場で凜さんに「タオル取って」ってお願いするシーンでした。

カツセ そこなんですか!(笑)

Ayase 僕は、バンドマン時代をずっと支えてくれた恋人がいて、長く同棲もしていたので、あのシーンがリアルすぎて……。なんかめちゃめちゃ泣けてきちゃって、「この生活の感じ、わかるー!」ってなりました(笑)。

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カツセ ははははは(笑)。

 

同じ曲名で物語とリンクした

Ayase しかも、もうひとつめちゃめちゃエモかったのが、物語の中で「City」という曲が出てくるじゃないですか。それも、音色くんが「City」のレコーディングをする前に凜さんを家から追い出してますよね。僕、その恋人と別れる別れないという話をしていた頃に、バンドで最後に録った曲が「City」という名前の曲だったんですよ。リリースしてない幻の曲ですね。

カツセ ええ、本当ですか!?

Ayase 実は、MVも撮って、CDも作ってたんですけど、バンドは活動休止になっちゃって。その「City」を録り終わった後に、僕は彼女と別れてバンドも終焉を迎え……。だから、「カツセさん、俺のことを書いてるの? なんだこのリンクは!」と思ったんですよ。

カツセ うわ、すごい、そんな偶然ありますか!

 

Ayase いや、本当にびっくりしましたね(笑)。個人的なリンクもありましたが、小説としてすごく面白かったです、本当に。『夜行秘密』はオムニバスっぽい形式だけど、連作小説になっていて、なによりどの話もめちゃくちゃ面白かったので、サクサクと一気に読めました。逆にこの小説から自分が曲を書くとしたらどうするかを考えたときにバーッと思い浮かんだのは、1曲では表現できないということでした。だから、カツセさんが14曲をひとつの物語として完成させたことは凄いと思います。