これまでの自分の作品からどれだけ抜け出せるか
カツセ 嬉しいですね、ありがとうございます。今作は「indigo la Endとのコラボレーション小説」として見る人と、「カツセマサヒコの2作目」として見る人がいると思ったので、その両方の期待に応えなきゃいけないというプレッシャーがあったんですけど、そういったプレッシャーとYOASOBIはずっと戦っていくんでしょうね。僕が1作目の『明け方の若者たち』を刊行した後、「こいつはずっと20代のエモい青春譚を書いていくんだろう」と予想する人もいただろうし、そういったニーズもあったとは思いますが、それを早く裏切って違う作風の物語を書くことを課題としていたんです。YOASOBIは、これまでの自分たちの曲からどれだけ抜け出せるかということを、どう考えているんですか? 「夜に駆ける」が代表作なのは確かですが、少なくとも僕は、今のYOASOBIに「『夜に駆ける』だけ」と言う人はいなくなっている印象があります。でも、そこに至るまではすごく大変だったんじゃないかと察します。
Ayase 「夜に駆ける」と同じ感じのものを求める声もあったりしますけど、「Ayaseが曲を作ってikuraが歌を歌えば、それでYOASOBI」という唯一無二のスタイルを確立しつつあるという手応えは感じているので、今はすごくチャレンジしやすくなっています。当初はたしかに、「こういうふうに攻めて大丈夫か」「この曲は求められているのだろうか」みたいな不安はありました。でも、僕らが優先してやることは、原作をどれだけ素晴らしい楽曲としてアウトプットするかなので。「ウケるかどうか」とか、「どう感じ取られるか」とか、届いたときのことばっかりを考えちゃうと、作品が死んでいくような気がするんですよね。
カツセ ああ! 刺さる~!
Ayase だから常にプライオリティーとしてあるのは、「いいものを作る」ということ。それが核にあるのが大事だなと思っています。
《取材・構成:矢島由佳子 撮影・鹿糠直紀(2iD)》
【続きを読む 川谷絵音率いるindigo la Endをベースにした小説『夜行秘密』 作者のカツセマサヒコとYOASOBI・Ayaseが感じたコロナ禍の“負の連鎖”とは】