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「たとえば、吉永小百合さまが…」

――日本の最大の武器はエロスだった、と。

村西 だって世界中で、エロスの表現をこんなにマニアックに追究してるのは日本人だけですから(笑)。アメリカのポルノは日本のAVと一味違います。発売する前にカウンセラーがチェックして笑顔が少なかったりすると直すっていうんです。要するに「本人も楽しくやっているんだ」ということを証明しないと発売さえできない。そんな状況で本当のエロができるはずがありませんよね。

――笑顔を足すのはすごいです。

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村西 しかしさ、女性だって「ダメ、許してください」と言いながら燃えてくることもあるはずですよね。そういう男と女の微妙な駆け引きというか刹那の世界に踏み込むからこそゾクゾクするんですよ。

村西とおる氏 Ⓒ文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

 たとえば、吉永小百合さまが羞恥心の世界の住人となり、ただ何気なく、足の付け根が見えないように着物の裾を押さえる、それだけで興奮する、そういう情緒の世界が大事なんです。

――それは確かに日本的なエロスな感じがします。

村西 本当にそうですよ。観光客が日本に来て一番楽しみにしているのは、70インチの大画面で等身大のエロが見られることでしょう。アパホテルは海外の人にしたらパラダイスですよ。日本の持つエロパワーには、世界中の人を揺さぶる力がありますから。

(村西とおる事務所提供)

「家庭では『キサマ』と呼ばれてございます

――村西監督の生きてきた人生はすさまじくパワフルでした。シーズン2では家庭内の話も多くて、奥様の乃木真梨子さんも登場しています。乃木さんご本人は自分の描かれ方に満足していましたか?

村西 妻はまったく関心がないですね。実は私などは、信じてもらえないかもしれませんが、家庭では「キサマ」と呼ばれてまして、とにかく下手に出て「まだ使い勝手がありますよ」「お邪魔しないで生きていくから見捨てないでね」って毎日顔色をうかがい這いつくばっています。とてもじゃないけど「全裸監督」の感想を聞きだすなんてできません。波風を立てることなく平穏が一番、これはどこのご家庭でも一緒かもしれませんけど。

――乃木さんは村西監督から見てどんな方ですか?

村西 彼女は僕の22歳下でね、最初はもちろん「女優さんの1人」でした。でもやっぱりインパクトはありました。「あの声で蜥蜴(トカゲ)食らうか時鳥(ホトトギス)」という言葉があるけど、彼女もまさにそんなイメージ。まさかこの方が脱ぐのだろうか、おセックスをして見せてくれるのか、というね。

 私が女優さんを選ぶ基準は“コントラスト”です。まるでお姫様のようなエレガントな女性が、一皮むいたらとんでもなく淫乱。そういう落差が大事で、誰とでもやる、やらせるようなお嬢さんじゃダメなのよ。