「乃木さんは“普通の女の子”」
――確かにシーズン1のメインだった黒木香さんも、乃木さんも知的な雰囲気があります。
村西 ただAV女優としての「エロスの表現の力」を黒木さんと比べてしまったら、彼女など束になっても敵いません。乃木さんは“普通の女の子”ですからね。黒木さんの存在感は圧倒的で、私がエロスの世界を切り開いていくまさに同志でした。AVに市民権なんてない時代に、2人で手を携えてエロスの世界を開拓していったんです。
ただ私が少し落ち着いた頃に、今度は彼女の“優しさ”に溺れていきました。面白いものです。
――お2人でお子さんも育てられていますよね。今は何歳になったんですか?
村西 息子はいま、社会人になっていますが「全裸監督」の話をしたことはありませんね。
土下座した村西氏の頭を子供が
――どんな子育てをされてきたんでしょう。
村西 生きることに必死でしたから、息子にはかわいそうなことをしました。1992年にダイヤモンド映像が倒産して50億円の借金を抱えてしまい、息子が生まれた頃はそれがまだだいぶ残っていた時期ですから。
――50億円もの借金とは……想像もできません。
村西 ただ当時の私は「こんなものひとまくりで返せる」となめていたんですよ。でもいざ信用を失ってしまったら、10万円だって稼げない。1年経って2年経って3年経って、これは絶対再起できないなと思い知るわけです。借金を返すどころか日常生活さえままならない。地下鉄の初乗り料金が払えないんだから。息子が生まれたのはそんな時期です。
――それは苦しい状況ですね……。
村西 当時は本当にお金がなくて、マンションの家賃も半年滞納するような状態でした。子供を幼稚園に送っていこうと家を出たら玄関口に大家さんがいて、「あんた子供なんか幼稚園に通わせているんだったら家賃払えよ」と言われまして、私は子供の前でしたけれど、その場に土下座して許しを請うたことがあります。息子は意味が分からないから「パパどうしたの? どうしたの?」って頭を小さな手で撫でてきて……。あの感触は今でも忘れられません。
――周囲の人は助けてはくれなかったのですか?
村西 調子がいい時は「一生ついていきます」とついてきていた人たちが、あっという間にいなくなりました。私の傍に残ってくれたのは妻だけでした。