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アルゼンチンの男子バスケットボールチームの強化策を研究

 東野は日本代表のアシスタントコーチ時代に、早稲田大学の大学院に通っていた。

 そこでは、かつて日本サッカー協会の専務理事なども務めた平田竹男教授(現内閣官房参与)のもとで学んだ。そのときの研究対象が、アルゼンチンの男子バスケットボールチームの強化策だった。実際に、2011年に東野は「男子アルゼンチンバスケットボールの強化・育成に関する研究」という論文を書いている。

 東野が論文を執筆した時期の日本代表は、国際大会から完全に見放されていた。五輪を見ても76年のモントリオール大会に出場して以降、出場はなし。1990年代の『スラムダンク』や、マイケル・ジョーダンの現役時代に生まれた「NBAブーム」も完全に過去のモノとなっており、まさに冬の時代だった。

 ただ、アルゼンチンにも似たような期間があった。

 彼らは1952年のヘルシンキ・オリンピックで4位になってから、96年のアトランタ大会で復帰するまでには、44年間、実に10大会ものブランクがあった(ちなみに奇しくも、今大会で日本もアルゼンチン同様10大会のブランクを経て、五輪の舞台に戻ることになった)。それでも、その時期を乗り越えて2004年のアテネ五輪で優勝しており、2年前のW杯でも準優勝を果たすほどの強豪となった。

 両国の間には似たような冬の時代があり、平均身長にも大きな差はない。

 例えば、東野が論文のために調べた2010年10月の時点で、18歳の一般男子の平均身長はアルゼンチンが172.6cmで、日本は171cmと大差はなかった。それが東野の興味をかき立てたわけだ。

アメリカとのハーフであるシェーファーアヴィ幸樹は206cm ©️JMPA

アルゼンチンの「身長発掘プログラム」

 東野は2016年に現在の技術委員長に就任したのだが、アルゼンチンにおける選手育成の方針について以前、こう話していた。

「日本とアルゼンチンで平均身長にはほとんど差がありません。ただ、アルゼンチンでは12歳や13歳などの年齢で、ある一定の身長に達していれば、上手いかどうか、運動能力がどうかも問わない方針でした。各年齢の一定以上の身長の選手を定期的に集め、年間のプログラムのなかで強化していたのです。そうした状況を知ると、日本は『強豪校にいる選手』や『運動能力の高い選手』を集めて育成をしてきたために、『高身長の選手』たちが置き去りにされてきたのだと気づいたのです」

 東野が言及したのが、アルゼンチンの「身長発掘プログラム」と呼ばれる育成プログラムだ。具体的には12歳で185cm、13歳で188cm、14歳で193cm、15歳で198cm、16歳で201cmを超えている選手たちは、その時点での運動能力などはほとんど問われずに鍛え上げるというものだった。