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「110番も119番もしようとしないんですよ」

「まこっちゃんは『話しかけても反応ないから寝ているのかなと思ったら、息してないんすよ。まじすよ。見ます?』と何事もないかのような口調で話していて。切羽詰まった感じもないので、本当なのかと疑いました。一方で、みゆは非常に狼狽えていました。当時、自分はみゆたちが瑠美さんにあれほど激しい暴力をふるっていたとは知りませんでしたが、今思うと、暴力がばれるのを恐れていたのかもしれません」

 この電話の後、岸被告は後部座席に座ったまま絶命した瑠美さんを乗せた車を、Xさんのバーの近くにある駐車場へ運んだ。Xさんも、山本被告とともに駐車場へ向かったという。

山本被告と岸被告

「後部座席には確かに瑠美さんが乗っていました。身動きひとつしませんでした。でもみゆが『博多署はまずい、救急もまずい』などといって、110番も119番もしようとしないんですよ。人が亡くなっているのにそれができないというのは普通の事態ではないですよね。巻き込まれるのは怖いなと思ったのですが、みゆから『助けて』と懇願されて、一緒にその車に乗り込みました」

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「壊死しているというのかな……黒い斑点だらけで」

 運転席に岸被告、助手席に山本被告。Xさんは瑠美さんの遺体の横に座った。身の危険を感じたXさんは、スマートフォンで密かに録音することにした。裁判で公開されている、山本被告らが「バタフライナイフで(瑠美さんを)刺した」などと話している音声は、Xさんがこの時に録音したものだった。

「これまでも、仕事の上で言った言わないと、何度もトラブルになったことがあるので、ヤバそうだなというときには録音する癖がついていたんです。瑠美さんが本当に亡くなっていて事件化したとき、自分は関係ない、ということの証拠にもなると思いました」

 午前5時過ぎ、瑠美さんの遺体を乗せた車は駐車場を出発。Xさんの隣に座る瑠美さんには「この世のものとは思えないアザがあった」。

「まこっちゃんが裁判で言ったように、瑠美さんは本当に眠っているように見えました。でも異常だったのが足のアザです。壊死しているというのかな……黒い斑点だらけで、まるで柄物のストッキングをはいているようでした。みゆに『このアザは何なの?』って聞いたら、『まこっちゃんが木刀で叩いた』『(山本被告も)バタフライナイフで刺した』と言いました」