1ページ目から読む
4/4ページ目

「泉の広場」に立つまでに経験したこと

 杏梨がなぜ大阪に出てきたのか、気になった。

「離婚したんです。もともと私は、北海道の出身なんです。20歳の頃にお見合いで結婚して、新潟に嫁いだんですけど、結婚生活がうまくいかなかったんですね。夫のDVがひどかったんですよ。結婚した当初は優しかったんですけど、子どもができてから、子の面倒を見ることに日々忙しくて、夫にかまっていられなくなった頃から、DVがはじまったんです。

 彼からしてみたら、俺の相手もしろってことなんです。子育てをしていると、夜の相手をするのも面倒になってくるんですよ。もともと毎日のように求めてくる性欲の強い人だったんで、拒絶されたのが気に入らなかったみたいで、それからちょっとお酒を飲むと殴る、蹴るの暴力がはじまったんです。最悪だったのは、姑も冷たい人で、『あんたはヨソもんだから』と言って、私の食事だけ出してくれないこともありました。10年は我慢したんですけど限界でした」

ADVERTISEMENT

 離婚前の数年は精神科に通うなど、追い詰められた末の決断だった。当初、夫は離婚に応じなかったが、どうしても離婚を望んだ杏梨が、親権を手放すことを条件に離婚に至ったという。

 地獄のような日々から逃れた先に辿り着いたのが、「泉の広場」であった。ところが、その場所は摘発により近づくこともままならなくなり、今では工場の給料とアプリで出会った男に体を売ることによって、生活を支えている。

「工場では飲食店で使う商品を扱っています。だから、コロナの影響による飲食店の時短営業が響いて、工場の就業時間も削られて、月に10万円ぐらいしか入ってこないんですよ。アプリのお客さんで月に6万ぐらいですから、貯金なんてできませんし、ぎりぎりなんですよ。早くコロナが終わって欲しいですね」

時短営業でひっそりとした大阪の商店街 ©八木澤高明

 彼女の人当たりの良さもあるのだろう。最近ではアプリで出会った男には、固定客となる者もいるという。中には、高校を卒業したばかりで、恋愛相談からはじまり、筆下ろしの相手もしたという。

 最後の話には思わず、大声で笑ってしまった。悲しみから笑いまで、濃密な彼女の人生遍歴の一端に耳を傾けているうちに、あっという間に昼休みの時間が過ぎてしまった。

 杏梨は、これから午後の仕事があるため、工場へと戻って行った。

 2人目に話を聞く女性は、新大阪駅からJRに乗り、京都方面に20分ほどいった駅で待ち合わせをすることになっていた。〈#3に続く〉

 「文春オンラインTV」では、筆者の八木澤高明氏が出演し、記事に書き切れなかった実態について解説している。

2021年上半期 社会部門 BEST5

1位:三重に実在する“ヤバい島”は「異国情緒溢れるリトル歌舞伎町だった」全盛期に訪れた男たちが語ったリアル
https://bunshun.jp/articles/-/47526

2位:「いきなりおじさんにガン見されて『遊び行こか?』と…」大阪・梅田の地下街で体を売っていた女性(30)の告白
https://bunshun.jp/articles/-/47525

3位:《有名なアイドルです。希望10 セット15》指原プロデュース・佐竹のん乃(22)高級交際クラブで“パパ活”【現場撮・証拠メール】
https://bunshun.jp/articles/-/47524

4位:「キスもします。仕事だから」コロナ感染の歌舞伎町セクキャバ嬢が告白した“おっぱいクラスター”の現在
https://bunshun.jp/articles/-/47523

5位:「行為の後にオモチャのお金を…」フライト激減、パパ活をはじめた現役CAが語る“シビアさ”
https://bunshun.jp/articles/-/47521