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 石碑には、この学校で学ぶ者は、一心不乱に勉強して村の改善に努めるだけでなく、この地が神武天皇をお祭りするところだと広く天下に知らせるよう努力すべきだ、という趣旨が書いてある。雅子さんが差したのはその先だ。

「もしも勉強したためかえって、軽薄になり働くことをきらい、楽することを願い、棚からぼた餅式のことを考えるようになったならば、教育の本意に反し、村民の名誉を傷つけることになるばかりではないだろうか」

石碑の内容を記している現代文。「こんなことが書いてありますよ」と赤木雅子さん

 その言葉を見つめながら赤木雅子さんは語った。

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「これってまさに財務省や近畿財務局の人たちのことじゃないですか? 夫に改ざんをさせて、知らんぷりで出世して平気でいる人たち。今も真相を解明しようとしない人たち。あの人たちにここへ来てもらって、この石碑の文を読んでほしいです」

「女性のあなたがそこにいる意味はある」

 さて、肝心の全国行脚の主目的、宮崎日日新聞の訪問はどうだったかというと、大歓迎を受けて、紙面で3回にわたり、記事や社説、1面のコラムで取り上げてもらった。

 さらに赤木雅子さんが最も喜んだのが、7月25日の紙面に掲載された「日曜論説」だ。「1人でも女性がいれば、少しは違っていたんじゃないかと思うんです」という雅子さんの言葉から始まるそのコラムは、高見公子論説委員が書いた。新聞社を訪れた際、取締役編集局長をはじめ大勢の編集幹部や記者に出迎えてもらったが、その中でただ一人の女性が高見さんだった。

 冒頭の雅子さんの発言について、高見さんが再度尋ねると雅子さんはこう答えた。

「(財務省から)説明やお葬式に来るのも(マスコミから)取材に来るのも、全て男性ばかり。黒ずくめのスーツで息苦しくて怖かった。そこに1人でも女性がいて、1人でも明るい色の洋服を着ている人がいたら、違っていたと思います」

 この言葉に高見さんは「女性のあなたがそこにいる意味はある、と言外のエールを語り掛けてくれているようで、ぐっときた」と記している。こういう風に感じてくれたことが、今度は雅子さんを喜ばせ元気づけた。

宮崎日日新聞社を訪れた赤木雅子さん

 マスコミはまだまだ男社会だ。各社の女性幹部の数はごく限られている。全国行脚で最初に訪れた沖縄タイムスでは、編集局長、論説委員長、赤木雅子さんのコラムを書いた論説委員の3人がそろって女性だった。それに驚いたことが逆に女性幹部がいかに珍しいかを示している。

 高見さんも男社会でいろいろな思いを重ねてきただろう。「女性のあなたがそこにいる意味はある」という言葉がそれを端的に表している。