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なぜ高齢者男性たちは筧千佐子に「後妻」を求めたのか 「“健康にいいから”と青酸入りのカプセルを勧め、死亡後に保険金を…」

『連続殺人犯』より#2

2021/08/09

source : 文春文庫

genre : 読書, 社会

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(11)筧康雄さんへの殺人

 滋賀県長浜市で生まれた筧さんは、大手電機メーカーの社員として、下水処理施設の電気整備工事の現場を統括するなど、管理職の仕事をしていた。まじめな性格で、趣味はウオーキングだった。94年に妻を亡くし、98年に退職したが、その3年後の01年に一人娘も亡くしており、向日市の自宅で一人暮らしをしていた。

 13年6月に京都府内の結婚相談所を通じて千佐子と知り合った筧さんは、同年11月1日には婚姻届を提出し、彼女と2人で暮らすようになった。12月中旬には千佐子が近隣に菓子折りを持って、結婚の挨拶に回っていたが、それから2週間も経たない12月28日午後9時頃、自宅内で青酸入りのカプセルを飲まされた筧さんは昏倒。同9時47分に千佐子が「夫が倒れて意識がなく、冷たくなっている」と119番通報したことで救急隊員が駆け付けた。

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 そのときの様子について、14年3月の時点で近隣住民は次のように語っていた。

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「夜中に救急車がやってきたので表に出ると、筧さんの家に救急隊員が入っていきました。旦那さんが担架で外に運び出されるときは、手がだらんと垂れていて、心臓マッサージも途中で止めたので、ああ、これは亡くなったんだと思いました。あそこの奥さん(千佐子)は、そのときの状況について、『書斎でパソコンをやってて、頭がフラフラする言うてこけた』と説明していました」

 やがて営まれた筧さんの葬儀の席で、千佐子は周囲を驚かせる言動をしたという。その様子について京都府警担当記者が明かす。

「葬儀中はずっと俯(うつむ)いていた千佐子でしたが、火葬場に向かう霊柩車のなかで筧さんの兄妹に向かって、『あるはずの通帳や印鑑、指輪がない』と保管場所を尋ね、わからないと言われると、『見つかるまで家のなかを探すからな』と、捨てぜりふまで口にしたそうです」