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 二度あることは三度あるを地で行く、82年組の同期生が演じたワルぶりにスポットを当ててみよう。この期は、渡辺美智雄蔵相の下で採用されたが、たまたま筆者は大蔵省の記者クラブである財政研究会(略して財研)を担当しており、採用の方針や経緯などについて、ミッチー節といわれた漫談調の大臣の口から聞かされた。

「青白きインテリばっかしじゃ、これからの大蔵省は務まらんぞ。変わった奴、面白い奴をどんどん採ったから、将来が本当に楽しみだ」

 採用された同期は27人。それまでキャリア官僚の大半を占めた東大法学部に対し、経済学部が6人も採用されたほか、一橋、京都、大阪、慶応、早稲田大学とバラエティに富んでいた。大学の部活も、ボクシング、ラグビー、野球、ウインド・サーフィンなど、体育会系を意識的に採っており、当時、政界で首相候補への階段を上り始めていた、ミッチー色を前面に出した新人採用ではあった。 

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 渡辺を囲んで新人全員が記念撮影に収まったり、一人一人のプロフィールが記者向けに発表されたり、異例ずくめのお披露目は大きな話題を呼んだ。だが、「変わった奴、面白い奴」を採用したからというわけではあるまいが、同期の多くがそのワルぶりゆえに奈落の底へと沈んでいった。

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宴もたけなわの秘儀「ジャングル・ファイア」

 第一弾は入省から十数年後、大蔵省不祥事の渦中で過剰接待を理由に、榊原隆が東京地検特捜部に収賄の疑いで逮捕された。同じく過剰接待により佐藤誠一郎が自主退職に追い込まれ、この時点で同期2人が大蔵省を去った。一連の接待汚職で逮捕されたキャリア官僚は、榊原ただ1人であった。

 過剰接待に明け暮れていたこの時期、省内のワル仲間の間で、ある遊びが流行ったことがある。文字に書くのも憚られるマニアックな遊びで、ためらいつつ事実を明かすと、要は男性のシンボル周辺の陰毛に火を点けて燃やすというものだ。

 彼らはそれを「ジャングル・ファイア」と呼び、夜の接待の場や行きつけのスナックなどでしばしば饗宴を繰り広げた。超エリートと下衆な遊びのあまりのギャップ──旧制一高時代の蛮カラ気質を彷彿させると同時に、ワルぶることでエリート性が一層引き立つ効果が演出された。