「まだ、毛が生え揃っておりません」
大臣主催の新人歓迎会の席上、宴もたけなわになった頃、どこからともなく「そろそろジャングル・ファイアやれ!」と声がかかった。さすがに幹部何人かが「やめろ」とストップをかけたが、時の大臣は「ジャングル・ファイアって何だい?」と聞いていたという。この遊びには落語のオチにも似た、笑えるエピソードが残っている。
夜も更けて、例の如く上司から「あれをやれ」と指示が出た。1人、2人と若手が応じる中、ある人物に順番が回った。すると、もじもじしながら、「申し訳ない、今日はできません」と答えを返した。すかさず、上司が「どうしたんだ」と問い質すと、若手は申し訳なさそうに、「まだ、毛が生え揃っておりません」。その瞬間、一同どっと笑いに包まれたが、ちなみにこの若手、現在は官界から政界に転じて活躍している。
それから20年後の第二弾、82年組が演じた醜態はもはや修復不能なほどのマグニチュードで財務省を襲った。福田のセクハラ疑惑と佐川の公文書改ざんはすでに書き尽くされた感があるので詳細には触れないが、ここでは財務省のエリート仲間が彼らの行為をどのように見ていたか、ホンネの同僚評を聞いて回った。
まず、事務次官まで上り詰めながら、民放女性記者との下品な会話が表沙汰になった福田。2018年4月、週刊新潮は福田の女性記者への、「胸触っていい?」、「手縛っていい?」などといった飲食店でのセクハラ発言を掲載した。当初、福田は否定したものの、その音声が公開されるに至り、辞任に追い込まれた。同じワルの文化に染まった時代を知るOBの1人は、大蔵省不祥事に揺れる九八年当時、主計局のみが出世コースであるという人事体系が頂点に達していた省内風景をこう振り返った。
「あの頃、主計局は足して二で割る調整型が中枢を占めるようになり、清濁併せ呑むタイプが優秀の評価を受ける風潮が強まりました。そんな仕事上のワルが、いつしか生活全般のワルに変質していき、同期や後輩を夜の街で連れ回すのが“できる奴”と見られるようになって主計至上主義の人事に拍車がかかった。その行き着く先が、大蔵省解体論になり、大蔵省始まって以来の大量処分につながったのです」