文春オンライン

「ネガティブな性格で、試合では不安に負けそうに…」 空手・清水希容を銀メダルに導いた、“五輪の先輩”野村忠宏のアドバイス

「人間が持っている能力を目覚めさせることが空手の奥義」

2021/08/06
note

「いろんな敵が見えるような演技をしたい」

「KATAは仮想敵との戦いを一人で演じる演武。目の前にも敵がいて、遠くにも敵がいて、見る人にもいろんな敵が見えるような演技をしたい」

 その言葉通り、清水の演武からは、周りの敵をバッタバッタとなぎ倒す姿が想像でき、こちらの心臓も高鳴りした。

 琉球王朝時代の沖縄で発祥した空手は現在、世界で1億3000万人の愛好者がいるといわれる。世界空手連盟の加盟国は187か国に及び、今や柔道と同じように、世界の「KARATE」になっている。

ADVERTISEMENT

©aflo

 競技には、二人で勝負する「組手」と、世界空手連盟が定めた102の形の中から選手が選択し演武する「KATA」の2種類があり、清水が出場したのはKATA。形の意味を理解し、突きや蹴りのスピード、正確性、リズム、バランスなどが7人の審判に採点方式で審査される。清水が決勝で演武したのは、糸東(しとう)流でも最も難易度が高い「チャタンヤラクーサンクー」だった。それを完ぺきなまでに演じきったが一歩及ばなかった。

 空手が東京五輪の正式競技に採用されたのは16年。そのニュースを聞いたときは清水は心が震えたという。

「今までテレビで見るものと考えていたオリンピックに出場できる可能性が生まれた。しかも東京で。五輪の方から私に近づいてきてくれた感じがして嬉しくて、嬉しくて…。絶対に出場したいと思っていました」