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《五輪7位入賞》日本長距離界の“救世主”三浦龍司は「箱根駅伝を走るべきなのか」問題

2021/08/06
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ハードリングより「動きづくりや体幹トレーニングのほうが必要」

 それに障害を上手に越えることよりも、越えた後にどれだけロスなく動けるかが大事なのかなと思っています。つまりは衝撃を減らして、次の動作にスムーズに移るための動きづくりや体幹トレーニングのほうが必要なのかなと思います。それが、結果的に障害を上手に跳ぶことにもつながるのかもしれません」

 障害種目とはいえ、基本的には中長距離種目。走力が下支えになっているというのが長門監督の考え方だ。

もともとはケニアの“お家芸”と呼ばれていた3000m障害。今大会はモロッコのエルバカリがV ©︎JMPA

 少し話題がそれるが、今年は男子の1500mでも日本記録が立て続けに塗り替えられ、7月に日本新記録を樹立した河村一輝(トーエネック)は、それまでの記録を一気に1秒63も更新する3分35秒42というタイムを叩き出した。この種目で日本勢はなかなか世界大会に出場できずにいたが、来年のオレゴン世界選手権の参加標準記録(3分35秒00)突破も、ようやく現実的に見えてきた。

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 明大出身の河村は、大学時代には1500mで活躍する傍ら、ハーフマラソンでも1時間4分4秒というなかなかのタイムをもち、箱根駅伝にも出場している。

明大時代には箱根でアンカーも務めた河村 ©︎JMPA

箱根とトラックレースの両立は大変?

「箱根と1500mの両方をこなすのは、質も量も自分の身の丈以上だった」

 河村本人は学生時代をこう振り返るが、逆に言えば学生時代に培ったスタミナがあってこそ、実業団に進み、種目を中距離に絞った時に、生来備わっていたスピードのキレを武器に戦えるようになったと見ることもできるのではないだろうか。

 三浦の場合も同じことがいえる。

 さすがに世界の強豪が相手ではラストスパートの前に遅れてしまったが、スタミナが強化されたことで、今年に入ってからは圧倒的にキレ味鋭いスパート力を発揮している。どれほど絶対的なスピードを持っていても、勝負の場面で発揮できなければ意味がない。ハイペースの展開に耐え、その局面で勝負するためにも、やはりスピード持久力とスタミナは必要なのだ。