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東海大・塩澤稀夕の飛び出しに「サンキュー塩澤」の声……“史上最遅”1区にドラマはあった――箱根駅伝2021「TVじゃないと見られなかった名場面」往路編

2021/01/04

 最終10区、ゴールまでわずか2kmのところで大逆転劇を演じた駒澤大学の優勝で幕を閉じた第97回箱根駅伝。

 コロナ禍で沿道での応援自粛が呼び掛けられた今年。毎年現地観戦をしている駅伝マニア集団「EKIDEN News」(@EKIDEN_News)の西本武司さんとポールさんも今年は観戦を自粛。ラジオ局「文化放送」に陣取り、同じく観戦や取材の機会をなくした出場校の学生新聞の記者たちとリモートでやりとりをしながら、例年になくテレビ中継をじっくりと楽しんだ。

 今年は一昨年に続き、元東海大陸上部主務で、現在SGホールディングスでマネージャーを務める西川雄一朗さんもスペシャルゲストとして参加。テレビ、ラジオ、SNSを網羅した彼らだからこそわかる“細かすぎる名場面”を語ってもらった。まずは「往路編」をどうぞ。(「復路編」もお楽しみください)

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【1区】“まさか”のスロースタートに…塩澤、覚悟の飛び出し 

西本 今年の箱根駅伝はテレビ中継が面白くなると思っていました。年末年始に「応援したいから、応援に行かない」のCMを何度見たことか。出演していたのは、いまだ破られていない“空前絶後”の1区区間記録保持者・佐藤悠基さん、二代目山の神・柏原竜二さん、三代目山の神・神野大地選手の3人。

ポール よくできたCMでしたよね。駅伝好きな人ほど「この3人に言われたら仕方ない、家にいます」と言いたくなる。老若男女を問わず、若者からミドル、オールドファンまで、全駅伝ファンに向けた絶妙のキャスティングでした。

西本 「1年生がすごい」とか、「かつてない高速」とか、どこを切り取っても「さすがオリンピックイヤー!」みたいな事前の煽りもあって、今年の日本テレビの放送は駅伝ファンの思いに応える充実したものになるだろうと期待感も高まりました。

 ところがいざスタートしたら……まさかの超スローペース!!

まさかのスロースタートとなった1区 ©時事通信社

ポール ならして1km3分30秒ですからね。前半は1km4分くらいのスロースタート。これはマラソン3時間切りを狙う市民ランナーくらいのペースで、トップランナーからしたらジョギングです。

西川 ちなみにCMにも登場した“空前絶後”佐藤悠基さんは、今、僕がマネージャーをしているSGホールディングスの所属なのですが、元旦のニューイヤー駅伝後に一緒に車で帰ってきたんです。その車内で翌日の箱根の話になり、佐藤さんは「1区の区間記録は状況にもよるけど多分抜かれる。いまのランナーのレベルはもうそこまで来ている。俺はそのつもりで見る」と言っていたくらいで。誰もがスピードレースになると思っていたのですが……。

西本 このスローペースで中継も大変だったと思います。いつも日テレは、CMを入れるタイミングから、学校紹介の尺まで、緻密に計算している。でも今回、放送プランは崩れたでしょうね。本来なら1kmを通過したら、どれぐらいのペースでレースが進むかが大体分かり、田町のあたりまで来るとディレクターが、カメラマンの乗る第1バイク、第2バイクなどの位置取りの指示を出す。ところが10kmを過ぎても、選手たちはGメン75のような横並び状態でした。

ポール 例えが古い(笑)。ただたしかに中継車もバイクも、監督の乗る運営管理車も、白バイもばらけることができずに大渋滞でした。