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駒大10区・石川拓慎「1年前の鋭すぎる眼光」から始まっていた“大逆転の物語”――箱根駅伝2021「TVじゃないと見られなかった名場面」復路編

2021/01/04

 最終10区での駒澤大学の大どんでん返しに誰もが驚いた今年の箱根駅伝。駅伝マニア集団「EKIDEN News」(@EKIDEN_News)の西本武司さん、ポールさん、そして特別ゲストとして東海大学陸上部の元主務で、現在SGホールディングスでマネージャーを務める西川雄一朗さんが箱根駅伝をマニアックに振り返る。(「往路編」もお楽しみください)

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【6区】駒大・花崎選手は“オンラインゲーマー”?

西本 僕は今年あたり、そろそろ駒澤大学が優勝するだろうと思っていたんです。だからいつもの金髪をこの日に合わせて紫色にしたんです。でも、往路が終わった段階で、「正直優勝はなくなった。前を追って2位か3位になれれば良いな」と思っていました。それが6区で花崎悠紀選手の大激走ですよ。

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6区で区間賞と好走した駒大の花崎選手 ©AFLO

ポール 57分36秒。58分を切るというのはとんでもないタイム。普通は走力もレース力もある4年生じゃないと58分を切れないと言われています。それが3年生でこのタイムです。

西本 ところが、ネット上では元駒澤の選手や関係者たちが「花崎があれだけやるなんて」「花崎があんなに(体を)絞ってくるなんて」という、「予想外にやるやつだった」という雰囲気のコメントが続々とタイムラインに並んでいくんですよ。「どんな選手なんだ…」と思っていたら、中3の受験を控えた息子から突然がLINEがきたんです。

「お父さん、さっき走った花崎って、ずっとネトゲで一緒にやっているひとだ」と(笑)。なんといつも息子とオンラインゲーム上で同じチームでプレーする仲間らしいんですよ!

ポール え? マジですか?

西本 しかも、陸上は全く関係なく、ネトゲでしか絡んでいないその息子も「駅伝走るとは言ってたけど、まさか区間賞とは」と驚いていた(笑)。うちの息子は夜中の2時、3時までネトゲをしているような、かなりの“ネトゲ廃人”なんですけど、駒澤大学が好きで、ランニングも好き。同じネトゲ仲間でも、頑張れば箱根で区間賞を取れるということがわかって、これであいつの人生の見方が変わるんじゃないかと密かに思っています。

ポール 花崎選手の走りで、ひとりの中学生の人生が変わる――なんかいい話ですね(笑)。