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駒大10区・石川拓慎「1年前の鋭すぎる眼光」から始まっていた“大逆転の物語”――箱根駅伝2021「TVじゃないと見られなかった名場面」復路編

2021/01/04
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【9区】給水係にもエントリーリストを!

西本 9区はやっぱり給水の話をしたいですね。一昨年は東海大の優勝を決めた「三上水」を取り上げました。出雲駅伝でMVPを取りながら、箱根を故障で走れなかった東海大の三上嵩斗選手が給水をしたことで、選手も気合が入って東海大の初優勝に一役買ったという話でしたが、そんなふうに、今年の給水でも9区の2つの給水に注目をしていました。

 1つ目は10km地点。駒澤大学の主将、4年生の神戸駿介選手の給水。本来なら10区を走るはずだった彼が、エントリーを外れた。きっと彼は10区のゴール地点で選手を迎えるだろうと思い、ギリギリ大手町に間に合う9区で給水をするのではと思っていました。

 もうひとつは青山学院大学の主将で、本来なら往路の主要区間である3区を任されるはずだった4年生、神林勇太選手の給水。12月28日に疲労骨折が判明して、エントリーを外れました。彼が給水をする事は予想をしていましたが、復路がスタートしてすぐに神林選手は「飯田、横浜駅で待ってるぞ」とツイートしたんです。

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西川 彼はあまりそういう発信をするキャラじゃないんですよ。なのに、自分からみんなに「俺はここにいるぞ」とアピールしてきた。「俺に任せろ」と。

ポール そんな背景もあったので、給水する彼らがどんなふうにテレビに映るのか、僕らは息を飲んで見守っていました。

西本 それは前年度の給水がポイントになっています。昨年ここでも話をしましたが、10区で中央大学の給水を800mの選手である田母神一喜選手が担当したんです。そのシーンがテレビに映った瞬間、まさかの名前のテロップが出たんですよ! 

 給水係にテロップが出るなんて、こんなすごい扱いは過去にはなかった。「あ、とうとう日テレさんは、ドラマを伝えるために給水にまで手を伸ばしたのか!」と思ったんですよ。だとしたら、今年のキャプテンの2人はどう映るのか…。これが我々の焦点でした。ワンショット、テロップありが最高級の扱い、“田母神クラス”です。

西川 もともと2人はエントリーされていたので、日テレ側もテロップの準備はできているはずですしね。

西本 スイッチひとつで出せる準備はできているはず。俺ならやるよね。さぁ、まず10kmポイントの神戸の給水!と意気込んだのですが、これがまさかのワイプ処理。

ポール なぜワイプ! 大きい画面で見たかった…。

西本 これが大きく映るかどうかでテンションが変わるじゃないですか。前年度、田母神にテロップを出したのだとしたら、神戸、神林にもやらなきゃ!! 少なくとも神戸はワンショット! だって神戸だよ! 都立高校から来て、叩き上げで駒澤の主将にまでなった神戸だよ! その神戸をワイプ。日テレさん、それはないよ…。

 そして青学の主将・神林くんですよ。ここにいる西川さんはチームメイトでもないのに出雲駅伝で「神林行け!」と声援を送っていて、その姿が映像に残っています。母校・九州学院高時代から交流はあるのですが、西川さんは東海大出身でSGホールディングスのマネージャー、チームメイトでもないのに……(笑)。

西川 あれ、ちょくちょくいじられるんですよ。こいつ大丈夫なのかって(笑)。

9区は青学大と東海大が競ってきたため給水にフォーカスできず… ©AFLO

西本 その神林の給水をみんなに注目してもらいたいと、西川さんが用意したハッシュタグが「#かんちゃんウォーター」です。

 

 テロップとのダブル効果で盛り上げよう!と思っていたのに、こちらもテロップなし。でも想像するに、日テレさんも神林の給水ワンショットで行きたかったはずなんですが、ちょうどそのとき青学が、西川さんの母校・東海大とガチガチに競っていたから給水にフォーカスできなかったんだと思います。これには西川さんも突っ込むに突っ込めない(笑)。

西川 まあ、仕方ないですよね(笑)。ただ、みなさんも給水係には注目してほしいですよね。それぞれにストーリーはありますから。

ポール これは毎年言っているんですが、給水係のエントリーリストが欲しいです。欲しいのは僕らだけかもしれませんが。