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東海大・塩澤稀夕の飛び出しに「サンキュー塩澤」の声……“史上最遅”1区にドラマはあった――箱根駅伝2021「TVじゃないと見られなかった名場面」往路編

2021/01/04
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【3区】東海大の“新・駅伝男”は石原翔time

西本 3区区間賞の1年生、東海大の石原翔太郎を意識したのは昨年の12月でした。突然、スウェーデンのモルテンというスポーツドリンクのブランドから「富津で合宿中の東海大を撮影してきて欲しい」とダイレクトメッセージが来たんです。

西川 千葉の富津で行われる合宿はめっちゃ大事です。コースがしっかりしているのでいい練習ができるし、毎年合宿を行っているのでタイムの目処もつきやすい。本当にたくさんの学校が来てますね。東洋、駒澤、東海、青学、中央、国士舘、明治、順天堂、国学院……大学だけでなく、実業団も来ています。

西本 東海も主力ばかりだったのですが、この練習でラスト1本、主力クラスの上級生を100m弱突き放して、1人で帰ってきたのが「イッツ翔タイム」こと石原翔太郎です。今年の箱根はたくさんの1年生が走りましたが、そのなかで前評判通りの結果を残したのは石原だけです。

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石原は11月の全日本大学駅伝でも4区区間賞 ©末永裕樹/文藝春秋

西川 全日本でも区間賞を獲得しましたからね。

西本 富津合宿を見て、彼は絶対来ると思いましたが、Twitterで呟くわけにもいかないので、ず~っと我慢していたのですがようやく言えました。その彼ですが、当日、「行ってきます!」とともに「#石原翔time」とツイート。ちょっとダサさを感じるハッシュタグも面白い。

西川 あんなに混戦でタスキをもらって、1年生なのに最初からバンバン行くのはすごい。普通は1回様子を見てしまいますよね。でも気付いたら引き離していて、海岸線に出たら、そこからはもう“翔タイム”でした。彼は館澤亨次以来の東海の“駅伝男”といえるでしょう。両角(速)監督も、人と群れないし自分があるから、しっかり走れると評価していました。

西本 1年生なんだけど物怖じしない、いい意味での態度のデカさもいい。翔といえば、アイドル的には櫻井翔、野球界的には大谷翔平でしょうが、これからの駅伝界的には石原翔太郎でしょう。ちなみに湘南にキャンパスがある東海大で、石原というと石原慎太郎のような湘南ボーイをイメージしがちですが、出身は岡山・倉敷ですので、お間違えなく。