鈴木さんはいい意味でおかしいんですよ(笑)
――鈴木さんは役柄にあわせて短期間で体格をガラリと変えてきますよね。
そう、いい意味でおかしいんですよ(笑)。『ひとよ』では吃音症の役だったんですけど、『燃えよ剣』(2021年10月公開予定)の撮影を控えた1週間前に、吃音の研究をしている先生と、自然と演じられるまで徹底して作り込んでいて。こちらとしてはありがたいんだけど、これから『燃えよ剣』で演じる近藤勇が吃音になっちゃうよ? と心配して言ったら、「やりきる自信があるから大丈夫です」と。彼の役に対する執念が信頼できるんです。
――今回鈴木さんが演じたヤクザの組長の上林成浩についてはいかがですか。非常に恐ろしかったです。
『TOKYO TRIBE』(2014)でもちょっと悪い役をやっていますけど、亮平くんはどちらかと言うといい人というイメージがついているので、むしろ作品にとっては利点になると思っていました。撮影は昨年10月だったんですが、亮平くんはコロナ禍による昨年4月の緊急事態宣言から10月までのほぼ全ての仕事がなくなったそうです。毎回、凄まじい作り込みをする鈴木亮平が、半年間ずっとこの作品に注力して、台本を毎日読んで、こういうのはどうですかと伝わらないレベルの細かいところまで掘り下げまくっていました。
さらに緊急事態宣言中に広島弁はほぼマスターしていました。台本はもちろん、独自で日常会話でも広島弁の練習をしていたんですよ。普通は、僕らの制作部とか演出部が用意した方言指導の先生のテープを、「はい、じゃあ練習して来てください」と役者に渡すのはだいたいクランクインの1か月前。それを半年前に勝手にやって完成しているという。
髪型は自分で試行錯誤
――髪型も不思議でしたよね。
あれはビートたけしさんの写真をフォトショップで切り出して自分の顔に合わせて参考にしたそうです。そういう試行錯誤が夜中の3時半とかに送られてくるんです(笑)。劇中で坊主にする時も「どうする?」と聞いたら、あっさり「坊主にしますよ」と。次の仕事は大丈夫なの? と聞いたら、なんとかしますってニヤリと笑うんです。いやもう頭が下がります。でもそういう人だからこそ日岡が活きる。僕と上林のコンビvs.日岡になれば、この映画がより面白くなるんじゃないかと思いました。僕は中間的な立場じゃなくて、とにかく日岡をいじめる側っていう(笑)。