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映画『孤狼の血 LEVEL2』の撮影現場はきわめてホワイト 白石和彌監督が取り入れた“リスペクト・トレーニング”って何?

『孤狼の血 LEVEL2』 白石和彌(映画監督)インタビュー #2

2021/08/21

 あと、映画業界って演出部も撮影部も録音部も若い人が少ないんですよ。昔はカチンコは20代前半でやって、2~3年打ったら次のセカンド助監督に昇進していたんですが、今は40代の人がカチンコ打ってるのも普通ですから。それぐらい若い人が入ってこない。もちろん賃金の問題など他にさまざまな要因はあるんでしょうけど、やっぱり働きやすい環境ではないことは周知の事実だろうし。何かを変えていかないと業界全体がジリ貧だなと思います。僕の周りで働いてくれている助監督さんも、他の組にも行くんですが、帰ってきて○○組はどうだった? と聞くと、監督が怒る人で気に病んで辞めたスタッフがいましたとか、そういう話をまだまだ聞きます。

スタッフに無理はさせたくない

――白石監督は、自分もそうだったからと同じように下のスタッフを怒るとはならなかったのですね。

 例えば監督のアイデアや希望が現実的に難しい内容だったとしても、スタッフは基本的には文句を言わず準備してくれます。でもやっぱりうまくいかないことはあって、その時に、何でまだできてないんだと思ったとしても、元を正せば自分が無理なことを言っているからだと思うわけです。スタッフは怒られるためにやっているわけではなく、みんな一生懸命、監督のビジョンを成立させようとして動き、いいものを作ろうとする集合体なのだから、そこを見極めて無理はさせたくないと思うようになりました。

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©2021「孤狼の血LEVEL2」製作委員会

――監督の現場に参加したいと希望するスタッフが増えそうですね。

 何かのイベントの時に、「白石監督の現場に入ったことはないけど、いつか呼んでください」と声を掛けられることが本当に増えましたね。あとは舞台関係の方にも「うちの業界も同じなので何とかしたい。良かったら力を貸してください」と言われたり。そんな力はないけど、そういうこと言ってくれると、声を上げて良かったと思います。