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なぜ人は食べ物を干してしまうのか。干物入門――初級編

アジの開きだけではない。『干したから…』森枝卓士が見た干物のすごい世界

2017/11/21

知ってますか? 干し物の秘密は結合水と自由水にあり 

 これらの例のように、冷蔵庫や冷凍庫などないような場所では、干すというのが一番、一般的な食品保存の方法ではないでしょうか。おそらくは、水辺、海岸の石、岩の上などで干からびた魚など見てのアイデアではないかしら。ふつうだったら、腐って徐々に溶けていく(分解されていく)のに、そのままの状態で残っている。

 何故なのかは分からないけれど、天気のよい日に外に出しておいたら、そうなって腐らない……。そんな経験則。

 理屈を少しだけいえば、食品の中で食品を腐敗に導く細菌が繁殖するには、適切な水分を必要とします。水分を減らしたら、つまり、干したら腐りにくくなるということです。

 もう少しだけちゃんと説明したら、食品に含まれている水分には、食品の成分と結合している結合水と、そうではない自由水に分かれます。後者が蒸発したり、凍ったりする方です。その自由水が細菌、微生物の繁茂と関係しているので、それを少なくしたらいいというわけ。

 自由水の割合を水分活性といいますが、その数値を低くするほど、腐敗しにくくなるということです。ちょっと蛇足を言えば、塩漬け、砂糖漬け、つまり漬け物にしたり、ジャムにしたりすると腐りにくくなるのも、この自由水の割合を下げるから、です。干物のように乾燥しているわけではなくても、自由水は少なくしているわけです。

ハーブのようにも見える大量の蕎麦。米も小麦も、穀物は収穫したらまず、干す。©森枝卓士

 閑話休題。

 そんな干したものを見ていると、改めて考えさせられます。

 思えば、私たちの主食も干したものではあるまいか。米や麦、あるいは様々な雑穀は干物という扱いは受けませんけれども、干したものですよね。加えて、大豆のような豆類だってそうだし、パスタや高野豆腐のようなものだって、そうじゃありませんか。

 そして、そのような加工をすることで、どこの地域でも同じであった肉や野菜が、その地域独特の食品となる。新しい味わいの発見を、人類はしたのではないか……。

 そんなことを考えたりします。

 というわけで、今回のお薦めは、味が変わるということを実感していただきたいということ。やってみようと思われたら、まずは百円ショップへ行きましょう。ザルや干し物用のケージのようなものがあります。

ザルに野菜を並べて。準備完了。©森枝卓士
気候によるが。夕方には出来上がり。晩ごはんのおかずに間に合う。©森枝卓士

 乾燥しやすいように、切り分けたり、ピーラーで剥いたりした、まずは野菜ですね、それを天気の良い乾燥した日に、干してみましょう。保存してもよし、そのまま、味噌汁などの具にしてもよし。ひと味違っていることを実感されるはずです。凝縮された旨み。

 あ、肉や魚も理論的には可能ですけど、初心者向けではないかも。そのあたりの話は次回、改めて。

マンションでも手作りできる。洗濯用の網棚を利用しても。

干したから… (ふしぎびっくり写真えほん)

森枝 卓士(著)

フレーベル館
2016年3月1日 発売

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