担当編集の捨て身のネタ提供
──「お笑い」の部分に関しては、担当編集さんも捨て身でネタを提供してくれるそうですね。
久世 「お笑い芸人」を扱っている以上、読者は面白いネタにも期待していると思うんですが、面白いことが何も浮かばない時もあります。そんな時に担当編集さんが「参考になれば」と、昔つきあっていた彼女との下ネタや捨て身のエピソードを送ってくださることがあって。とてもありがたいんですが、ヘビーすぎて使えないんです(笑)。でも、自分では体験できない貴重な情報なので、今後も期待はしています。
──貴重なネタ提供者ですね(笑)。『ニラメッコ』では、舞台裏で芸人が「そろそろ売れたいなぁ」と本音をもらすシーンなど、実際に見てきたかのようなリアルな場面も描かれていますが、こちらは実際に取材されたのですか?
久世 取材はコロナの影響でほとんどできなかったので、代わりにお笑い芸人さんの舞台裏を特集したドキュメンタリー番組やインタビューを片っ端から見て妄想をふくらませました。
とくに、漫才の頂上を決める「M-1グランプリ」の舞台裏を追いかけたドキュメンタリー番組からは、たくさんのインスピレーションが浮かびましたね。撮られていることに気付かずに舞台裏でネタ合わせをしている漫才師の方々の真剣な表情や、漫才を終えて舞台から降りた瞬間の表情などは、作品にもかなり反映しました。
──リアルな臨場感を出すために工夫されていることは?
久世 お笑い芸人という「言葉で戦う」職業を生業としている人たちをモチーフにしているので、最近の漫画にしてはセリフ量を多めにしています。あとは、キャラクターたちが漫才をする会場に、実在の「ヨシモト∞ホール」の舞台を描くなど、実際にある建物や舞台を入れて、フィクションとノンフィクションを融合させることで、「ウソ」っぽくならないようにしています。
もともと実際に経験していないことやウソは描けない性格なので、SNSに対する考え方なども、自分の思いや経験を描いていることが多いです。
とはいえ、主要キャラクターが5人ともイケメンというのはウソじゃないかとよくご指摘もいただくのですが、女性読者からの期待に応えたい一心で誠心誠意イケメンを描いていますので、そこは目をつむっていただければありがたいです(笑)。
(取材・構成:相澤洋美)
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