開会式直前の関係者“辞任ドミノ”に始まり、メダル候補のまさかの敗戦やダークホースによる下馬評を覆しての戴冠劇、コロナ禍で開催され、明暗含めて多くの話題を呼んだ東京オリンピック。ついにその長い戦いも閉幕しました。そこで、オリンピック期間中(7月23日~8月8日)の掲載記事の中から、文春オンラインで反響の大きかった記事を再公開します。(初公開日 2021年7月26日)。

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「先輩方から、若い時の久美そっくり、と言われるんですよ。私、あんなに生意気だったのかと今になって冷汗が出る…」

 そう言って苦笑いしながら相好を崩すのは、バレーボール女子日本代表監督の中田久美。オリンピックシーズンの今年、新人セッター・籾井あき(20)を選抜した理由を聞くと、真っ先に口にしたのがこんな言葉だった。

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中田久美監督は「籾井が成長すれば日本の組織バレーは60%以上完成する」と語る ©aflo

 その時に「先輩って誰?」と尋ねなかったが、中田の若い頃を知っている人となると、おそらくモントリオール五輪の金メダリストたちか、ロサンゼルス五輪のメンバーだろう。

 中田は15歳で代表入りし、18歳で出場したロス五輪では銅メダルを獲得。現役時代は「天才セッター」の名をほしいままにしてきた。かつての日本女子バレーの栄光を知るメダリストたちが、その中田に籾井はよく似ているという。 

 そして中田はこうも言った。

「籾井が成長してくれれば日本の組織バレーは60%以上完成する」

 バレーの勝敗はセッター次第と言われる。特に日本のように、海外の強豪勢に比べ平均身長が10cm程度低い場合、身体能力の高さを生かした個人技に頼ることはできす、組織力や戦術の巧みさで戦うしかない。その生命線となるのが司令塔のセッターだ。