開会式直前の関係者“辞任ドミノ”に始まり、メダル候補のまさかの敗戦やダークホースによる下馬評を覆しての戴冠劇、コロナ禍で開催され、明暗含めて多くの話題を呼んだ東京オリンピック。ついにその長い戦いも閉幕しました。そこで、オリンピック期間中(7月23日~8月8日)の掲載記事の中から、文春オンラインで反響の大きかった記事を再公開します。(初公開日 2021年8月6日)。

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 悲願の金メダルはかなわなかったーー。 

 石川佳純、平野美宇、伊藤美誠の3人で臨んだ女子卓球団体決勝戦。対戦相手は難攻不落の中国。決勝戦までは、ハンガリー、台湾、香港をすべて3-0と圧倒的な力でねじ伏せてきたが、中国には0-3でストレート負け。銀メダルに終わった。それでも、メダルを獲得したロンドン、リオと比べ、中国との距離は確実に近くなっていることを見せつけた。

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 団体戦のみに出場した平野は、試合直後のテレビインタビューでこう答えている。

「この5年間は東京五輪を目指してきたんですけど、調子のよい時と悪い時が凄くあって、卓球をやめたいと思った時もたくさんあった」

平野美宇選手 ©JMPA

 そんなコメントを聞きつつ、これまで体験した艱難辛苦が思春期の女性をどれだけ苦しめてきたのか、改めて思い知った。

 その一方、決勝までの4試合に、極度の緊張が強いられる場面でも、実に生き生きとプレイしていた。様々な苦労を乗り越えてきたからこそ生まれた、心の余裕だったのだろう。

 前回のリオ五輪は、平野の卓球人生の大きなターニングポイントになっている。平野は補欠として出場。周りから聞こえる「(伊藤)美誠ちゃんとは差がついちゃったね」という言葉に無理やり笑顔を作った。

 同い年の伊藤とは幼い時から切磋琢磨し、「みうみま」ペアで多くの大会に出場。14年のドイツオープンでのペア優勝は、最年少優勝記録としてギネスブックにも認定された。だが、リオ五輪は2人に大きな溝を作った。

 平野は、試合に出場する福原愛、石川、伊藤の練習相手をこなし、道具係も務めた。試合は観客席から見た。16歳の少女が経験するにはあまりにも残酷な光景だった。